2023年12月22日
大雪の際に強い味方となる除雪機ですが、誤った使い方をすると命を落とす危険もあります。1月から2月までの雪のピークを迎える前に、除雪機を安全に使うためのポイントをお知らせします。
概要
2013年度から2022年度までの10年間にNITE(独立行政法人製品評価技術基盤機構)に通知された製品事故情報※1では、除雪機による死傷事故は38件ありました。このうち21件が2020年度から2022年度の3年間に発生したもので、特に降雪量が多い地域で事故発生件数が多くなっています。また、除雪機の事故38件のうち25件が死亡事故となっており、その多く(25件中21件)が、使用者の誤使用・不注意によるものです。

(※) 本資料中のすべての写真は、実際の事故とは関係ありません。
(※1)消費生活用製品安全法に基づき報告された重大製品事故に加え、事故情報収集制度により収集された非重大製品事故やヒヤリハット情報(被害なし)を含みます。

(※2)2013年4月1日~2023年3月31日に発生した除雪機による死傷事故38件を対象とします。
除雪機の気を付けるポイント
- 安全機能を無効化しない。
- エンジンを掛けたまま離れない。
- 人が近くにいる時は使用しない。障害物に衝突しないよう注意する。
- 雪詰まりを取り除く際はエンジンを切り、雪かき棒を使用する。
- 屋内や換気の悪い場所ではエンジンを掛けたまま待機しない。
1.除雪機の構造と各部名称

2.除雪機の事故発生状況
除雪機による死傷事故38件について、発生状況を示します。
2-1.事故発生件数の内訳
図2に「被害状況別の事故発生件数」を、図3に「原因区分別の事故発生件数」を示します。除雪機の事故は被害状況別では死亡事故が最も多く、事故原因の約8割が誤使用・不注意です。
(死亡事故25件中21件、重傷事故11件中10件、軽傷事故2件中1件が誤使用・不注意によるもの)

2-2.事故事象別の事故発生件数
表1に「事故事象別の事故発生件数」を示します。死亡事故は「除雪機の下敷きになった」、「除雪機に巻き込まれた」の2つの事象で多く発生し、重傷事故は「エンジンを掛けたままの除雪機内部に手を入れた」事象で多く発生しています。
また、38件中26件が安全機能を無効化したり、使わなかったりして事故に至っています。

3.事故事例
3-1.除雪機の下敷きになった事故
事故発生年月 2021年1月(広島県、80歳代・男性、死亡)
- 事故の内容
- 使用中の除雪機の下敷きになり、死亡した。
- 事故の原因
- 使用者がデッドマンクラッチ機構を大きな洗濯バサミで固定して無効化したため、除雪機を後進中に転倒した際に、手を離しても除雪機の走行が停止せず、使用者に乗り上げて下敷きとなったものと考えられる。

3-2.除雪機に巻き込まれた事故
事故発生年月 2021年1月(新潟県、9歳・男児、死亡)
- 事故の内容
- 除雪機を使用中、こどもがオーガ(回転部)に巻き込まれ、死亡した。
- 事故の原因
- 除雪作業の途中、使用者が除雪機のエンジンを切らずにオーガが回転したままその場を離れたため、周囲で遊んでいたこどもがオーガに接触したものと考えられる。

3-3.除雪機内部(ブロワ)に手を入れて負傷した事故
事故発生年月 2022年12月(秋田県、50歳代・女性、重傷)
- 事故の内容
- 除雪機のブロワ(投雪口)に詰まった雪を取り除く際に、左手指を負傷した。
- 事故の原因
- 使用者がエンジンを掛けたまま、付属の雪かき棒を使用せずに直接手で除去したため、回転部に触れ、事故に至ったものと考えられる。

3-4.一酸化炭素中毒になった事故
事故発生年月 2023年1月(北海道、80歳代・男性、死亡)
- 事故の内容
- 物置で除雪機のエンジンを掛けたまま待機中、一酸化炭素中毒で1名が死亡した。
- 事故の原因
- 現在、原因を調査中。

除雪機の気を付けるポイント
安全機能を無効化しない。
デッドマンクラッチ機構のクラッチレバーを固定するなどの安全機能の無効化をすると、使用者が転倒などした際に除雪機が停止せず、除雪機にひかれたり、巻き込まれたりするおそれがあります。

バサミで無効化する様子
エンジンを掛けたまま離れない。
除雪機のエンジンを掛けたままその場を離れると、こどもが近づいて触れるなどし、思わぬ事故につながるおそれがあります。一時的にその場を離れるときでも、必ずエンジンを切ってください。
人が近くにいる時は使用しない。障害物に衝突しないよう注意する。
除雪作業をする際は、周囲に人がいないことを確認しましょう。特に背丈の低いこどもは死角に入りやすいので、十分気を付けてください。また、後進する際は、足下や後方の障害物を事前に確認し、転倒することがないよう気を付けてください。
雪詰まりを取り除く際はエンジンを切り、雪かき棒を使用する。
エンジンを掛けたまま雪を取り除く作業を行うと、手を負傷するおそれがあります。雪が詰まった場合は、エンジン及び回転部の停止を確認し、直接手で行わず、必ず備え付けの雪かき棒を使用して取り除いてください。
屋内や換気の悪い場所ではエンジンを掛けたまま待機しない。
作動中の除雪機の排気には一酸化炭素が多く含まれています。一酸化炭素は無色・無臭で、発生に気が付きにくく、また非常に毒性の強い気体です。閉め切った屋内で除雪機のエンジンを掛けたままにすると、短時間で一酸化炭素の濃度が高くなり非常に危険です。除雪機は始動/停止も含め風通しの良い屋外で使用しましょう。エンジンを切った状態で、手で押して移動できない大型の除雪機等の場合は、窓などの開口部を開放して十分な換気が取れていることを確認してから、「屋内で始動し速やかに屋外に出る」、「屋内にしまったら速やかにエンジンを切る」などの対策をしてください。
関連資料
本発表資料のお問合せ先
関東経済産業局 産業部 消費経済課長 黒木
担当者:製品安全室長 野村
製品安全室 松岡、高橋
電話:048-600-0409(直通)