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「現場の知識を武器に、具体的にイメージを描けるか」(株式会社ヨシダ、株式会社メルティンMMI)

東日本大震災より10年。日本が抱えるディープイシューのひとつに「廃炉」がある。この課題解決に、地域の中小企業とベンチャーがタッグを組んで挑み始めた。精密な溶接・製缶技術に長け、放射性物質の隔離と遮へいが可能なグローブボックス製作を強みとする株式会社ヨシダ。生体信号処理技術と、生体模倣から着想を得たロボット機構制御技術をコア技術に「アバターロボット」を作り上げた株式会社メルティンMMI(以下、MELTIN)。接点のなかった二社が共同研究を実現するまでに至った理由を紐解いていく。

株式会社ヨシダ
取締役業務本部長
米川周佑

1984年岡山県生まれ。東京薬科大学大学院生命科学研究科博士後期課程修了。ドイツハイデルベルク大学生化学センター(BZH)、日本イーライリリー社勤務を経て、2017年株式会社ヨシダ入社。1923年創業以来、原子力機器メーカーとして培ってきたグローブボックスの隔離技術と、先駆的なベンチャー企業との協業により、エネルギー分野(廃炉事業)や医療分野へ取り組む。最終目標は、作業者の被ばくや二次感染をゼロにすること。

株式会社メルティンMMI
取締役CTO
關(せき)達也

1987年群馬県生まれ。電気通信大学大学院知能機械工学専攻卒業。在学中には従来のロボット工学の概念にとらわれない独自の駆動機構研究により2013 IEEE Robotics and Automation Society Japan Chapter Young Awardを受賞。2013年に株式会社メルティンMMIを起業。現在は取締役CTOとして企業経営を行いながらも、機構開発といったハードウェアから、制御システムのファームウェア、ユーザーインターフェース用ソフトウェアの他、解析ソフトウェア構築までソフトウェア、ハードウェアともに全般的に担う。

出会いは“異質”な問い合わせメール

米川 MELTINさんとの出会いは、2019年の電気新聞に掲載されていた『アバターロボットが廃炉作業で活躍する日』という記事を見て、私が問い合わせフォームに連絡したことが始まりです。すぐに返信があって嬉しかったですね。

關(せき)  あのリリースには大小含めて多くの反響がありましたが、ヨシダさんの連絡だけ”異質”だったんです。興味を持っていただけるのは非常に嬉しいが、正直、頂いた案件すべてに対応できるだけの余裕はベンチャーにはない。でもヨシダさんからの連絡は「MELTINの技術を自分たちのアイデアのこの部分に使わせてほしい」という具体的なもので他とは明らかに違った。何より、パッションを感じる内容でした。

米川 ヨシダのグローブボックスへ、精密に動くロボットハンドを取りつけるアイデアは、入社時から描いていたものでした。私は海外で経験を積み、親の会社を継ぐため帰国しました。会社に新しい風を起こすための重要なアイデアのひとつだったのです。これまでも世界中の遠隔操作ベンチャーに、このアイデアを伝えてきましたが「廃炉」イコール「困難かつ高度な課題」というイメージがあり、実行できていませんでした。

 正直なところ、リリースの中で原子力分野を含めた極限環境への展開に触れたものの、アバターロボットの最初の導入先は、通常の陸から、その次に空や海。10年後くらいに宇宙や廃炉といった極限環境にいけたら、くらいの感覚だった。ヨシダさんからの連絡は良い意味での予想外でしたね。

米川 議論を重ねていくと、MELTINさんの技術が原子力分野に適していると改めて実感しました。遠隔操作可能な点はもちろん、放射性物質を扱うことになる指先には、ワイヤー駆動を採用していることで放射線に弱い半導体部品の数が極端に少ない。現在、廃炉作業でもロボットが応用されつつありますが、半導体への影響を考慮して、遮へいや半導体部を分離した設計が必要となっています。また廃炉に係る放射性物質の分析作業などは、極めて複雑なため、5本指を持ち人間のような動きができるロボットハンドは魅力的でした。

 そんな私たちのロボットハンドでも廃炉へ応用するにはMELTIN単体では不可能。廃炉はヨシダさんのもつ隔離と遮へい技術があってこそ挑める領域ですね。

「現場感+α」で広がる可能性

 多くの中小企業はベンチャーが一番、欲している現場感を持っています。ヨシダさんから共有していただいている顧客の生々しいニーズを聞きながら一緒に開発ができることは大きなアドバンテージです。今回の例に限らず、別分野でも多くの中小企業はこうしたアドバンテージを持っているのに、保守的で変化を嫌う企業があることはもったいないですよね。ベンチャーと対比すると大手企業は変わりたがらないといいますが、中小企業の方からもその傾向を感じることもあります。

米川 たしかに、下請けで売上が成り立つ企業は、その傾向になりやすいかもしません。一方でニッチな技術で経営している会社は、その技術の新しい活用方法をいつでも探しています。また最近はコロナの影響もあって、企業意識も少しずつ変化しているように感じていますが、どのように営業、ましてやベンチャーと関わるのか分からなくて困っている中小企業も多いと思います。

 ベンチャーだって、自分たちの技術やアイデアが活かせる場所をひたすらに探し求めています。ベンチャー側からの売り込みも然るべきですが、中小企業側からも、こんな新しい物を一緒につくりたいという具体的な構想と、自社や廃炉の未来を変えていきたいというパッションを伝えてくれたからこそ、私たちはヨシダさんとぜひ一緒にやりたいと感じたのです。

米川 そう言っていただけると嬉しいですね。ベンチャーにはエッジの立った技術がある。中小企業が顧客の現場から得た知識や課題を活用し、ベンチャーとどんなことができるかを具体化して発信すれば、面白い連携が増えてくるのかもしれないですね。

 ベンチャー側も意識を変えていくことが大切です。定石である大企業との連携は経営戦略としてやはり重要。しかし、スピード感が大きな課題になる。大企業は、余程意識が高いところでなければベンチャーのスピード感にはついてきてくれない。スピード感をもって現場の課題に直接リーチしたければ、中小企業との連携は非常に魅力的です。

「廃炉」が産む技術は世界を救う日本の強みに

 最終的には熱中症と戦いながらやっていた作業が嘘のように、冷房の効いた部屋から車の運転ぐらいの容易さで、遠隔操作できたらいいですね。人間につらい仕事は全部アバター経由でやったらいい。

米川 いいですね!廃炉の現場にずらりとグローブボックスがならび、アバターが全ての作業をこなしている。そんな風景をつくりたいですね。
 

 日本という国はこれまで原子力発電所をつくる側として輸出してきました。しかしその原子力発電所の稼働終了時の解体方法や処理方法は世界で始まったばかり。東日本大震災の事故があり「廃炉」が直近の課題ですが、日本の重要な技術輸出として、原子力発電所の建造から解体までをやり遂げられる未来を作りたいです。

米川 まさに現場でも注目され始めているのが、高線量サンプルの分析作業や廃炉作業をロボット等で構築する「スマートデコミッショニング」の考え方。我々の世代でこれを実現するというのが、責任だと思っています。この技術ができれば原子力分野のみならず、医療分野における感染症対策や、宇宙産業にまで応用できるはずと確信しています。

 日本は技術輸出の国。膨大な蓄積によって他国にマネできない技術を作り上げて、世界に飛び立たせていきたいですね。

米川 ものづくり・ハード×ソフトの技術こそが世界の人を幸せにすると私は信じています。私たちの技術で世界を変えていきましょう!

※本記事は、2020年度当局委託事業 「中堅・中小企業とスタートアップの連携による価値創造チャレンジ事業」の一環として制作しました「創業応援vol.21(2021年3月、リバネス出版)」の「地域中小企業ベンチャー連携の鍵」のコーナーに掲載された記事を転載しています。

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電話 048-600-0313
FAX 048-601-1287

最終更新日:2021年5月11日