特集

  「新規事業創出促進シンポジウム」開催結果
〜新たな成長エンジンの創出、企業発ベンチャー〜                                                                 

地域経済部  新規事業課

 平成26年2月17日(月)、ベルサール神田にて、「新規事業創出促進シンポジウム」を開催しました。
 急速に変化するグローバル経済社会において、企業はその変化する市場や産業構造への対応が急務であり、イノベーションを通じて新規事業や新市場を創造していくことの重要性がいっそう高まっています。
 本シンポジウムは、企業発ベンチャー協議会(※)と協力しながら、企業内の新規事業創出、特に「企業発ベンチャー」という手法による新規事業創出事例を紹介し、その成功のポイントや課題・問題点を共有しました。

シンポジウムチラシ

第一部 基調講演

 基調講演では、2008年5月に戦後初の独立系ベンチャー生命保険会社としてスタートし、今までにないサービス展開により、起業からわずか3年10ヶ月で上場を果たしたライフネット生命保険(株) 代表取締役会長兼CEO 出口 治明氏から、「ライフネット生命の挑戦」と題して、立ち上げの経緯や理念、ご自身の経験を踏まえ起業に当たっての心構えなど、新規事業に挑戦する方々への心強いメッセージをいただきました。


※ライフネット生命保険株式会社
http://www.lifenet-seimei.co.jp/


<講演のポイント>
 
1.新規事業にチャレンジするに当たっての心構え

  • どんな良い職場であっても、100%満足している人はいない。人間は向上心があるため、自分の職場や地域を理解しつつも、どこかを変えたいという気持ちを持っているもの。周囲の世界を理解し、どこが嫌で自分に何ができるか、これが人間が働き生きる意味であると考えている。
  • 世界を見るためには、次の二つの方法がある。
    @時間軸・空間軸を広げることで、自分のポジションが分かる。
      時間軸=自分の会社は、誰がどういう思いでつくった
       のだろうか、どういう風に発展してきたのだろうか。
      空間軸=ライバル会社は何に取り組んでいるのか、
       どういう風に伸びてきたのだろうか。
    A国語ではなく「算数」で考える(数字・ファクト・ロジック)。   
  • この15年、20 年をGDPのフローベースでみると、日本は貧しくなっている。高齢化の中で貧しくなると社会は安定しない。この国にとって一番大事なことは、競争力を復活させることだが、フローの順位を上げるには、マクロとミクロの二つの視点が必要。
    @マクロの視点(労働の流動化)
    ・日本で成長する分野は、医療、介護、IT、農業、教育。これから成長する分野に、人がたくさん流れ、ベンチャーが起こらないと競争力は上がらない。しかし、去年の学生の就活人気企業トップ10は、大手銀行や大手保険会社など。労働資源配分の原点から歪んでいる。成長分野に対する労働を流動化しない限り、競争力は向上しない。
    ・なお、米国のトップ10は、ベンチャー企業3割、公務員3割、NPO3割。米国は金融の国であるが、ゴールドマンサックスは51位。
     Aミクロの視点(一人一人の仕事の仕方)
    ・日本の大企業のボードメンバーは、同じ会社の中で上がってきた人が中心。一人ひとりは優秀でも、同じ音符が並んでいる。音符の種類は、メンバーが10人いても、2,3種類くらい。
    ・グローバル企業は、意思決定と業務執行を分けるので、社外取締役が多い(女性、若者、外国人)。音符が全部違うので、意思決定が速く、色々なアイディアが出やすい。
    ・良い仕事をしようと思えば、人とは違うことを考えるしかない。そのためには、人、本、旅で勉強するしかない。できるだけ多様な人と付き合うことにより、ダイバーシティ空間をつくり、音符を交換しない限り良いアイディアは生まれない。


 2.ライフネット生命の立ち上げ

  • 日本では、特に若者が貧しい。人間にとって大切なことは、次の世代を育てること。これが一番の価値であるべき。20代が一番貧しく、子育てにお金がかかること、それこそが少子化の根本的な原因。
  • ゼロから保険会社を作り保険料を半分にすることで、安心して赤ちゃんが生める社会を作りたいと考え、60歳で起業。
  • ライフネット生命を立ち上げたとき、最初に作ったものは、「思い」と「旗(マニフェスト)」。一緒に取り組む仲間を集め、事業会社やベンチャーキャピタルに対して説得力のある説明をしていくためにも、理念は、本当に大事だと思っている。
  • 保険は統計ビジネスであるため、製造原価は基本ほぼ同じ。違いは、会社の経費。ネットで保険を販売するという単純なビジネスモデルであるが、世界中になかった。
  • ライフネットの挑戦は、どうやって認知度・信頼度を上げていくかが全てだった。5年間経営をして分かったことは、うまい方法はないということ。
  • 本を書いたり、ツイッターやFacebookをやったり、自分を先頭にライフネットを発信しなければ、認知度や信頼度が上がらない。


 3.新規事業挑戦者へのメッセージ

  • ベンチャーを起こしたい人からよく相談を受けるが、「強い思い」と「算数」の二つの言葉に尽きる。いくら「思い」があっても、ビジネスモデルを聞いたときに、「算数」ができなかったらダメ。収支計画がしっかりしていないと誰も助けてくれない。
  • 21世紀はモノやサービスが溢れている時代。商品やサービスを売る前に、会社の理念や哲学をちゃんと知ってもらい、共感し応援してくださるファンを作らなければ、21世紀は生きていけない。

第二部 パネルディスカッション

 パネルディスカッションでは、下記の3名に登壇いただき、「企業発ベンチャー」の創出を支援する立場から、「今こそ、企業発ベンチャー」というテーマのもと、陥りやすい罠や成功のポイントについて議論いただきました。
(パネリスト)
  ・吉井 信隆 氏  インターウォーズ株式会社 代表取締役社長
  ・中村 裕一郎氏  上武大学経営情報学部 教授
(ファシリテーター)
  ・西山 昭彦 氏  一橋大学特任教授、東京ガス株式会社西山経営研究所長
             /企業発ベンチャー協議会 理事


 1.パネリストの主な取り組み紹介
   吉井氏 (インターウォーズ株式会社
http://www.interwoos.com/)

  • 1995年に創業し国内草分けの「企業内起業インキュベーション支援」会社。「経営幹部人材紹介」、「事業開発コンサルティング」、「企業マッチング」、「イントレプレナー育成塾運営」、「出資」がメインソリューション。
  • 130数社の企業内起業をサポート(例:「(株)九九プラス(現・(株)ローソンマート)」、「(株)イオン銀行」、「(株)メンバーズ」、「オイシックス(株)」、「テラモーターズ(株)」など。)多くの事業が成長。
  • 企業内起業家のことを「イントレプレナー」と呼び、「イントレプレナー塾」を開講。これまで大企業をはじめ業種を問わず154名が参加し、約2割が事業立ち上げに着手。
  • 「起業チーム」結成支援や投資などを通じて、事業の立ち上げをハンズオンでバックアップ。特に、「起業チーム」は成功するかどうかの重要な要素。そのため、企業の経営幹部候補生の在籍出向の受け入れやヘッドハンティング型で参加してもらうといったソリューションも展開。

 中村氏 

  • 2013年3月まで富士通(株)において、富士通発ベンチャー企業創出の責任者として事業を推進。これまで23社を輩出、うち1社が上場。現在は上武大学で教鞭を執る。
  • 大企業にとってベンチャー企業は、ハイリスクの開発をベンチャーキャピタルのリスクマネーを使い、取り組む重要なパートナーであり、ベンチャー企業にとって大企業は、成長とエグジットの重要なパートナーという共通認識が持てるような環境醸成に注力。
  • 富士通時代にも、社内シーズを活用した富士通発ベンチャーと社外ベンチャー企業との連携を積極的に模索。
  • 「アライアンス・イノベーション」という考え方を提唱。大企業がベンチャー企業とアライアンスを組むことで、イノベーションを推進していくという考え方。自社の強みと弱み、及びリスクの度合いを軸とした、「イノベーションマップ」という手法を用いて、日本型エコシステムの構築を推進。


 2.パネルディスカッションのポイント
 ■企業発ベンチャーを推進する側(会社側)に求められることとは

  • 企業内起業家育成の出発点として重要なのは、自社の本業を見極め、強みと弱みを理解すること。創出されたビジネスプランが自社の新事業展開の方向性と合致するものであれば、社内で新規事業(コア事業)として位置づけられる。
  • 一方、エッジの効いたビジネスプランを、自社事業に無理に合わせようとすると、せっかくの革新的要素がなくなるため見極めが重要。自社にとってノンコア事業でも外部資金が得られる可能性があれば成長の見込みがある。
 

 ■企業発ベンチャーを立ち上げていく上で、陥りやすい罠とは

  • マーケットに答えがあるにもかかわらず、意志決定をする経営陣が身近にいて、頻繁にプロセスに口を出されると、経営陣の頭にある答えに整合させようという罠に陥り、マーケットと乖離した商品・サービスになることが多い。
  • 経営陣と適当な距離感を保つため、富士通発ベンチャーの場合、富士通が資本の50%以上は持たず、起業家が50%以上持つというのが基本的な方針。
  • 責任は起業家側が持つことが大原則。親会社を頼りにできない状況の方が成功しやすい傾向。親会社を頼りすぎると罠に陥る。三菱商事(株)発で「Soup Stock Tokyo」等を展開する(株)スマイルズは、他の資本を入れて成功した事例の1つ。

 ■企業発ベンチャーの成功要因とは

  • 企業発ベンチャーの挑戦者に対して、文句を付けることは簡単。厳しく言ってもへこたれず、強い決意を持っている人は成功する。強い意志が協力者を引き付け、ネットワーク化に繋がる。
  • アイディアに生命力があることも重要。数あるビジネスプランの中でも、余韻が残るアイディアというのが必ずある。その人のファクターがあり、アイディアは本質的にはその人の内から出てくるもの。生命力があれば、時代が本人のやろうとしていることに追いつき花開くこともある。

 ■企業発ベンチャーの挑戦者及び支援者へのメッセージ
  吉井氏

  • 経営は時代の洞察にある。世の中と逆行したことをやってもダメ。オイシックス(株)は2013年3月に上場し、売上は約150億。当初はネットで生鮮野菜は売れるはずがないと否定的なことを言われていた。しかし、有機野菜で腐らない野菜もあり潜在的なニーズがあるのではないか。深くカテゴライズをしていくと新たなニーズが見えてきた。
  • 企業内起業の最大の競争優位性は経営資源を使うということにある。それをフルに使い、自己の思いと会社のベクトルを合わせて、世の中に問いたいことを強く思ってやりきってほしい。 

 
  中村氏

  • 最近、若者を中心に起業に対する抵抗感がなくなってきており、応援したい。一方で、富士通の若手が、“起業家になりたい”という理由で起業したいと言っても辞めておけと言う。強い思いがあり、どうしてもやりたいことが見つかってから起業すればよい。それまでは会社に残りネットワークを築き、社会を勉強すべき。
  • 大企業がベンチャー企業の製品を使い、ベンチャー企業を買うということをやれば良い循環ができ、チャレンジしやすい環境ができる。大企業には、意識的に全社的な新規事業開発組織を作り、ベンチャー企業と協業する意志を社内外にアピールしていくことが求められる。

  

  西山氏

  • 新規事業やベンチャーは、起業しようか、就職しようかと迷ってやるものではなく、やらざるを得ないときにやるものだと思う。
















<ベンチャー企業支援策の紹介>

  経済産業省 経済産業政策局新規産業室より、予算や税制など、最新のベンチャー企業支援策を紹介しました。
 経済産業省HPへ(新規産業・ベンチャー政策)
http://www.meti.go.jp/policy/newbusiness/index.html  

企業発ベンチャー創出に向けて

 本シンポジウムには、大企業や中小企業において新規事業創出に携わっている方をはじめ、企業発ベンチャーへのチャレンジを検討している方、ベンチャー企業の方、それらを支援する立場の方など、業種や分野を問わず大勢の方に来場いただきました。
 来場いただいた方からは、「起業における要諦(「強い思い」や「算数」)がシンプルに分かりやすく伝わってきた」、「起業家以前に人としての在り方など、良い考えをたくさん得られた」、「大企業の自前主義からの脱却の手段として、ベンチャー企業活用の必要性を強く感じた」、「成功するためにも失敗事例の紹介があると良い」等、たくさんの貴重な意見をいただきました。
 当局では、本シンポジウムを契機として、企業発起業の機運がいっそう高まることを期待するとともに、具体的なアクションに繋がるように、企業発ベンチャー協議会(※)と協力しながら、企業発ベンチャーの創出促進に引き続き取り組んで参ります。

(※)企業発ベンチャー協議会  http://kigyohatsu-v.com
 企業発ベンチャーに関心を持つ個人、起業関係者、研究者などによる交流、情報交換、調査・研究活動、及びそれらの成果を社会に積極的に情報発信していく場の創出を目的に設立されたコミュニティ。

<企業発ベンチャーmagazineの紹介>
 当局では、先進的に企業発起業を促進している企業や企業発ベンチャーを成功させた経営者などのノウハウや体験談を取りまとめ、小冊子として発行しています。併せてご覧下さい。
http://www.kanto.meti.go.jp/seisaku/sogyo/kigyouhatsu/magazine.html


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