平成27年度地域産業振興講座(第7回)開催概要

地域経済部 地域振興課

日時 平成27年10月14日(水)
テーマ 1.テーマ:川越市内の商店街   
  講 師:NPO法人「川越蔵の会」  
       代表理事 原 知之
       川越市立博物館
       主幹 荒牧 澄多
2.テーマ:観光おこしと地域づくりで地域を支える公共交通実現をめざすイーグルバス株式会社の取組について   
  講 師:イーグルバス株式会社 
       代表取締役 谷島 賢       
3.テーマ: 地域の商業者支援に必要なことは        
  講 師:神奈川県商業流通課
       副主幹 鈴木 博明

 第7回地域産業振興講座では、「地域産業振興プロデューサー」をテーマとし、午前中に川越市の蔵の町や商店街を見学後、川越市の町づくりを牽引してきたNPO法人「川越蔵の会」代表理事原氏及び川越市立博物館荒牧氏から、住民が主体となる町づくりについて講演いただきました。午後からは企業が主体となる産業振興と自治体が主体となる産業振興について、イーグルバス株式会社代表取締役谷島氏、神奈川県庁商業流通課の鈴木氏からご講演いただきました。今回はその概要について掲載いたします。

1.川越市内の商店街の取組について 

NPO法人川越蔵の会
代表理事 原 知之 氏
川越市立博物館
荒牧 澄多 氏

 (1)住民による町づくりの経緯   

 川越市の住民による町づくりは、 1970年代の全国的な町並み保存運動 が活発になった頃から始まり、専門 家の調査により蔵の価値が見いださ れたことや歴史的建造物の取り壊し 反対運動、町並を壊す恐れのあるマ ンション建設への反対運動等を通じて、市民の中で文化財保護への気運が高まり、現在においても市民の文化財保護への関心は高い。
 1970年代後半の商店街活性化による町並景観保存の観点から若手商店主や建築・まちづくりの専門家等との出会いにより、「川越蔵の会」が1983年に発足。これにより住民主導のまちづくりが本格的に動き出した。川越蔵の会は2002年に法人化し、現在ではNPO法人川越蔵の会として多方面にわたり川越市のまちづくりに携わっている。  
 蔵の会のワークショップに想を得て、一番街商店街はコミュニティ・マート構想調査を実施することとなる。その成果として、1987年には商店街会員からなる「町並み委員会」が発足、「商業活動の活性化による経済基盤の確立」・「現代にふさわしい住環境の形成と豊かな生活文化の創造」・「地域固有でしかも人類共有の財産としての価値を持つ歴史的町並の保存と継承」といった3つの目標を達成するための「町づくり規範」を制定した。当初この規範は一番街商店街における町づくりの規範であったが、その後、伝統的建造物群保存地区の決定に伴い保存地区内の4つの自治会・商店街による「川越町並み委員会」として改組したのを機に、4つの自治会・商店街にて運用されている。この規範に基づき、商店街活性化による景観保存を目指す川越蔵の会と、川越町並み委員会の協働により、今に見られる伝統的な町並み・景観が保存されてきた。

(2)川越蔵の会の活動について  

 川越蔵の会では、主に「町づくりデザイン活動」・「町づくりのイベント」・「伝統的建造物の保存活動」・「広報及び啓蒙活動」の4つの事業を基軸に活動している。  まず、「町づくりデザイン活動」では、伝統的な家屋の修復や町並に合う建物の新築に対し、市民相談や商店街へのアドバイス等を行う他、建築設計コンペ等を開催している。
 次に「町づくりイベント」では、川越の文化を育む催しであるお茶会や歴史的建物を利用したアートイベントを開催している。また、空き家となっている蔵造り商家の掃除活動等もイベントの一環として実施し、伝統的な建造物の保存に努めている。
  「伝統的建造物の保存活動」では、歴史的建造物の保存運動や活用、川越市からの委託による伝統的建造物の記録保存・実測調査を行っており、これまでに旧川越織物市場や旧鏡山酒造跡地の保存・活用等に大きく貢献している。
  「広報及び啓蒙活動」としては、イベントや保存運動を通して市民への歴史的景観に対する関心を高めたり、さまざまな団体の視察や学生等の受入をはじめ市内の新築建物等への景観賞の贈呈等、多岐に渡り川越の町づくりに貢献している。

 (3)川越町並み委員会の活動について  

 川越町並み委員会は、蔵造りの町並み保存と商店街を活性化させるためには伝統的な町屋建築を活用するという考えから、一番街商店街により組織された。現在では、川越市都市計画条例に認定された都市景観推進団体として、住民による自主的なまちづくりの協議機関としての役割を果たしている。当委員会では、「町づくり規範」に基づき、建築行為に対する助言や提案を行っている。現在、川越市の伝統的建造物群保存地区内の全ての建築物・工作物の現況を変更する場合には、市へ現状変更行為許可申請をする前に、川越町並み委員会との事前協議が必要となっている。

(4)町づくりの今後の課題   

 川越市の町づくりの今後の課題として交通事情が上げられている。蔵の街として、観光客が増加すると共にこれまで以上に交通量が増加したことから、振動等による蔵への影響や歩行者への安全対策が急務となり、迂回ルートを指定するなどの方法が挙げられ、交通量の調査を実施するとともに、社会実験なども行っている。

2.観光おこしと地域づくりで地域を支える公共交通実現をめざすイーグルバス株式会社の取組について

イーグルバス株式会社
代表取締役 谷島 賢 氏

(1)見える化とダイヤ最適化    

 日本の乗合バス事業の現状として、全国の71%の乗合バ ス事業者が赤字であり、特に地方においては88%の事業者 が赤字となっている。その結果、日本のバス事業者は疲弊し、 毎年赤字路線が廃止となり交通弱者の移動手段が年々失われ ている。    
 なぜ路線バス事業が改善されず、現状のような状況になっ ているのかというと、一旦車庫を出発してしまうと運行中の 時間の遅れや乗客数等、状況を細かに把握できないことから、事業上の問題点の抽出や改善プロセスの形成が難しいことが最大の理由である。    
 これまで自治体からの委託によりバス運行を行い、公共交通を活用した観光おこしと地域づくりへ取組み、赤字路線の改善を行ってきたイーグルバス株式会社では課題を抽出し事業を見える化するために必要な要素として、ハード・ソフト・プロセスの3要素に着目しハード面においては、ダイヤ最適化システムを開発し運行の見える化(問題バス停別平均乗車人員、バス停間平均乗車人員、バス遅延時間、利用者がいない運行区間等)を図り、ソフト面では顧客ニーズの見える化(アンケートの実施)や、コストの見える化(原単位管理)による運行ダイヤの最適化を行い、プロセスにおいて、改善過程を見える化した。

 (2)赤字路線改善過程の見える化による路線バス改善プロセス      

 改善を図るために重要なことは、改善過程を明確化し、自治体に対し自社が出来ること、出来ないことを明示した上で協力することであり、イーグルバス株式会社では改善過程を見える化するために、路線バス事業改善3年モデル(図表1)を作成した。このモデルはダイヤ最適化システムを活用し、1年目にPDCA導入サイクル(運行の見える化、顧客ニーズの見える化、コストの見える化)の実施、2・3年目にPDCA改善サイクル(サービス供給の改革、利用者需要の創出、運行過程の見える化)の実施を経て、地域で支える公共交通の実現を図るもので、見える化されたデータを元に改善アイデアを決定しこれを継続改善、評価するものである。      

(図表1)路線バス事業改善3年モデル

(3)ダイヤ最適化による路線バス改善例   

 イーグルバス株式会社ではこれまでダイヤ最適化による赤字撤退路線の改善を手がけている。PDCA改善サイクルの中の供給改革では交通ネットワークのハブ&スポーク※1化による多方向への需要の対応やデマンドシステム※2の導入による高齢者等への対応、外国人観光誘客を目指す取組や観光客を取り込むための経路変更、ハブ停留所の連携による広域サービスの強化など多くの手法による改善実績を有し、誘客を図っている。

※1 いくつかの拠点となるバス停からその他のバス停へ路線網を構築すること  

ハブ&スポーク(イメージ図)

※2 利用者の有無にかかわらず、あらかじめ定められた時刻に運行する一般の路線バスと違い、予約があった時のみ運行する方式で、運行方式、運行ダイヤ、発着地等を自由に組み合わせられる運行方式

3.地域の商業者支援に必要なことは

神奈川県商業流通課
副主幹 鈴木 博明 氏

(1)神奈川県内商店街の現状について    

 神奈川県内には約1,100の商店街があるが、約6割の 商店街において空き店舗が発生している状態で、平成26年 度商店街実態調査において商店街の状況について、繁栄また は回復しているという回答をした商店街は全体の約1割とい う状態である。

(2)補助金主体の商業振興策の行き詰まりについて    

 補助金により商店街はきれいになったが、商店街に活気が出てこないということが根本的な課題。補助金を活用し、商店街に活気が出るか、本当に自立を促せるのかという点に対し疑問がある。 
 補助金を活用し、ハード面の整備等を行った場合、その後の維持費や補修費が発生してくることから、事業の見通しが明確でない事業への補助金利用は、事業者へ事後の負担を強いるものでしかない。あくまで補助金は目的達成の手段であり、補助金を貰うことが目的となってはならない。
 また、自治体等の補助を供与する側についても、補助事業を実施する必要があるのかの見極めができるかどうかが重要である。

(3)やる気を出してもらうのが振興の仕事

 商業者のやる気を引き出すため、行政は商業者と信頼関係を築く必要があり、そのためには商業者との関係を密にし、両者で商業振興について考えなければならない。 
 これまでの商業振興策は、商業者への補助金交付が中心であった。しかし行政の財政状況が厳しく、補助金が減少していく中で、補助金に依存した商業振興はできない。今後は、商店街にある資源と知恵を使い、補助金に頼らない商業振興を行う必要がある。行政と商店街が共に、商業者にどのように地域で活躍して欲しいのかを考えていくことが重要。

(4)商店街に一番必要なのは、まず知ってもらうこと    

 商店街が開催するイベント等の最大の目的は「知ってもらう事」である。イベントを実施するために時間と労力を割いても商品や店主の魅力が伝わらなければ、全く意味の無いものになってしまう。どんな形であれ、次の商売につなげるためのPRが最も重要であり、且つ商店が一番見落としてしまうポイントである。
 またイベントにおいては、他の商業者のPR手法について学ぶことが大切。商品の売れ残りは商品に問題があるのではなく経営者自身の手法に問題があると自覚するとともに、売れ筋が良い商店の手法を取り入れ、自身のPR手法を改善していくことが必要である。

 (5)中小商店の後継者問題   

 後継者問題は多くの商店が抱えている難解な課題の一つである。経営者の家族が事業を継いでくれる以外の事例はほとんどないのが現状。しかし店を継続するだけが解決の手段ではなく、商店主が「商売をやってよかった」と最後まで楽しみながら店を閉めることも解決策の一つと考える。
 経営者が自分の商売をどのように感じているか、経営者にとってどんな生き方が幸せか、どんな人生が地域の市民や子供達にとって必要なのかを考えることが必要であり、経営者が幸せに感じられる営業を続けることにより、その姿を見て商売を志す若者や子供が出てくる事が後継者問題の解決策と考える。

 (6)まとめ   

 商店街振興において重要な事は、商業者との対話から経営者が自分の商売に対しどのような感情を抱いて経営しているのか、どんな生き方が幸せなのかということを聞き出すことであり、行政はそういった中から、商業者が本当に必要としている支援策を聞き出し、商業者が事後に無用な負担を背負わないよう配慮しながら支援を行うことが重要である。

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