第6回地域産業振興講座

地域経済部 地域振興課

日時 平成27年9月16日(水)
テーマ 1.テーマ:日本理化学工業株式会社 訪問
2.テーマ:日本で一番大切にしたい会社
  講 師:法政大学大学院 政策創造研究課       
       教授 坂本 光司

 第6回地域産業振興講座では、「大切にしたい会社」をテーマとし、午前中にベストセラー「日本で一番大切にしたい会社」に、「障がい者の方々がほめられ、役立ち、必要とされる」会社として掲載されている神奈川県川崎市のチョークメーカー、日本理化学工業株式会社を訪問しました。日本理化学工業株式会社では取締役会長の大山泰弘氏から事業の目的や意義・行動指針についてご講演いただき、その後工場内を見学させていただきました。午後からは「日本で一番大切にしたい会社」の著者である法政大学大学院教授坂本光司氏から、人を大切にする経営についてご講演いただきました。今回は、企業訪問、講演を通じて得た学びについて受講生のレポートを紹介します。

〈受講生レポート〉

1.日本理化学工業 訪問

日本理化学工業(株)
取締役会長 大山 泰弘氏
 

 企業訪問では、日本理化学工業株式会社 の障がい者雇用への取組や経緯についてお 話しいただき、その後、障がいのある社員 が作業へ従事できる環境整備への創意工夫 について工場内を見学しながらご説明いた だきました。

【受講者1】

○印象に残った点とその理由  

印象に残ったのは、主に次の4点である。

  1. 大山氏が工場見学中に「○○さん、今日もありがとうね」と優しく声をかけていたこと。
  2. 知的障がい者が仕事で他者に迷惑をかけた場合、保護者の下へ帰宅してもらい、本人が迷惑をかけた事を保護者に対し謝罪した後に、仕事へ復帰してもらう方法をとっていること。
  3. 知的障がい者が働きやすいよう、ダストレスチョークの製造工場に様々な工夫が施されていること。
  4. 障がい者を一人雇用することにより、国の支出を年数百万円削減できること。

 上記4点の中で、私が最も印象に残ったのは3であった。具体的には、文字が読めなくても必要な原材料を判別できるよう入れ物が色分けされていたり、目盛りが読めなくても原材料の必要量を計測できるように天秤と重りを用いることにより、知的障がい者にとって一般的に困難と思われる仕事の内容であっても、管理者が考える様々な創意工夫により仕事に取り組める環境を整えていることである。製造工場で見られた様々な工夫は、同社が長年に渡って試行錯誤の中で生み出してきた知恵の結晶であり、知的障がい者の雇用に熱心に取り組む経営を象徴していると感じた。

○今後の活かし方  

 日本理化学工業株式会社の様々な工夫は、知的障がい者だけでなく、健常者にとっても安全で正確、効率的な製造工程のため有効なものが多い。私は今回の工場見学で製造工程の具体的な工夫の方法を学んだ。今後は、他の工場見学の際、こうした工夫ができないかという視点でアドバイスなど行って行きたい。

【受講者2】

○印象に残った点とその理由  

 大山会長の講演で印象に残った点は、勤務体制として管理者と班長制度を整えている点である。まず管理者の役割は障がい者が安心して働ける環境を創意工夫して整える。多くの障がい者の方々の働く環境を検討することは容易ではない、その重大な責務は管理者のモチベーションになるであろう。また、どうしても管理者だけでは最適な勤務環境が見いだせない場合、会社全体で勤務環境を検討する体制が整っている。次に「班長」は、障がい者の中から規則を守ることができ、周りの人に教えられる人を課長の補佐役として位置づけている。「班長」は会社の模範として捉えられ、障がいのある社員が目指す役職であり、日々の意欲向上に繋がっているそうだ。職場環境にて「モチベーション向上の場」と「安心して働ける場」の両立が上手くなされており、自身の職場環境を考えるきっかけともなった。

○今後の活かし方  

 日本理化学工業株式会社はシェアトップのチョークメーカーである。既存事業に留まらず、粉が出ないダストレスチョークや、ガラス等の平面に描け、濡れ布巾で消せる「キットパス」を開発している。大山会長の講演と、障がい者の方々が実際に働く工場を見学した後では、私が考えていたチョークの価値そのものが変わり、同社の製品がオンリーワンの商品であると感じられるようになっていた。自分の価値観を変化させたのは、企業の経営方針と知的障がい者の方々の懸命に働く姿である。単に物を売るのではなく、その商品の物語(ストーリー)が明解になったことで、企業と商品価値が増幅し、消費者心理として購入意欲が湧いていた。   こうしたオンリーワンの企業価値が、経営方針、社員、技術、商品のどこにあるのか、支援機関は企業ごとに見極め、その価値を最大限発揮されるようアシストすることが重要である。私の勤務する自治体でも羽田空港が国際化され、インバウンドを見据えた、ものづくりのまちとしての“お土産商品”が求められている。単に匠の技術から作られたB to C商品というだけでなく、地域としての「ストーリー」が込められた商品でなければ消費者の心を掴むことは難しい。今回の訪問で、商品に付随する「ストーリー」の重要性を再認識した。今後B to C商品開発の一知見として活かしていく。

法政大学大学院
教授 坂本 光司 氏

2.日本で一番大切にしたい会社

 坂本光司教授には、人を大切 にする経営の重要性、経営者に とって最も大切な人とは誰なのかということについて企業の事 例や指標を踏まえご講演いただきました

【受講者1】

○印象に残った点とその理由

 坂本教授の講演で、従業員の意見を聞く経営者の姿勢についての話が印象に残った。  
 それは「いい会社の100の経営指標」の解説の中にあった。大分類「(1)社員に関する指標」の中に「定期的に労働条件や就業環境等に関する社員満足度調査を外部に依頼し、その満足度は常に70パーセント以上である」という指標がある。そこで坂本教授は、「社員が自分の意見を経営者に聞いてもらったと実感すること」が大切だとお話された。外部による社内満足度調査を行うと、「@(経営者から見て)納得のできること」「A不可能なこと」「B納得できるけれど現実的に対応できないこと」の3つの意見に分かれるそうだ。その中の@については経営者として対応する、その上で重要なのはBについて社員に「なぜ対応できないのか」理由を伝えること。なぜなら、そうすることで社員が自分の意見をきいて貰ったと実感するという。  
 また、リピート顧客の多い会社として紹介された長野県の中央タクシー株式会社の事例が印象的だった。この会社は、「我々は長野県民・新潟県民の生活にとって必要不可欠であり、さらに交通弱者・高齢者にとってなくてはならない存在となる。」と憲章に謳い、無線配車率99%を誇る会社である。1998年の長野オリンピックの際に、多くのタクシー会社がオリンピック報道関係の会社と専属的な契約をする中で、中央タクシーはしなかった。実は経営者である宇都宮社長の判断で、一度は契約をしていた。しかし、社員から「自分達をいつも使っている県民(顧客)が使えなくなり生活に不便が出る人がいるから止めてほしい」という意見があり、契約を取り消したという。
 以上の事例においても、経営者が従業員と対話する姿勢を持っている点がポイントとなっている。集団において他者と対話する姿勢は当然のように求められる。しかし、会社経営においてリーダーシップを取る経営者が、(就業)環境等を整えるだけでなく、従業員と対話する姿勢を持ち続けるのは、時に大変な努力を要するだろう。一見当たり前なことではある。しかし、そこに努力や工夫があるはずだ。

○今後の活かし方  

 講座後の親睦会で、「人(特に従業員)を大切にする経営」が「良い経営」に結び付く理由やそれらの会社を我々(行政や金融機関)が支援する根拠を説明する必要がある、という話になった。そのためにも、今後は「人を大切にする経営」の裏側にある経営者の努力について耳を傾け、その相関性を自分の論理として持つ。さらに、そこから経営者の課題やニーズを汲み取る努力をしていく。

【受講者2】

○印象に残った点とその理由  

 印象に残った点は、企業の業種や規模に関わらず、全ての企業が大切にしたい会社になれる可能性がある点である。  
 大切にしたい会社は、業績が良い企業や特定の業種、規模に属する企業に限らない。全ての企業が大切にしたい会社になれる。そのためには、人を大切にした経営を行うという考え方を経営者が持つことが重要である。経営者が人を大切にすることによって、社員は会社のために貢献しようとする。  
 また、大切にしたい会社の経営は景気に左右されず、安定的に業績を伸ばしている。大切にしたい会社が地域内に増えれば、地域経済は良くなり、地域の課題解決や産業振興に繋がる。  
 しかし、人を大切にした経営について、その考え方を広く浸透させ、大切にしたい会社を増やすためには、時間を要する。そのため、大切にしたい会社となり得る企業に対して、行政として地道に支援していかなければならない。

○今後の活かし方

 大切にしたい会社が増えるには、経営者が考え方を変える必要がある。そのために、「日本でいちばん大切にしたい会社」認定制度(坂本光司先生等が主催する「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞※事務局注)の概要を伝えるだけでなく、今回、日本理化学工業株式会社を見学して、私が感じたことを市内の企業にまずは伝える。その際には、経営者と直接会って、話すことによって、大切にしたい会社の重要性を伝える。そして、大切にしたい会社となり得る企業を探し、行政として根気よく支援する。  
 また、これから創業しようとしている者に対しても、ぜひ創業時から大切にしたい会社の考え方を認識して、創業するように創業セミナー等を実施していく。これから本市の創業支援策を検討するにあたって、大切にしたい会社の考え方を踏まえたものができれば、他の自治体には無い本市の特徴ある創業支援策になる。  
 本市においても昨年度から商工会議所にて独自の「大切にしたい会社」認定制度を開始した。しかし昨年度は認定基準を満たす市内企業はいなかった。そこで、今年は「大切にしたい会社」認定企業を生み出し、今後、当該認定企業が本市を代表する企業となるように、行政として支援していく。

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