平成26年度地域産業振興講座(第10回)開催概要

総務企画部企画課

日 時 平成27年1月21日(水)14:30〜16:00
場 所 電気通信大学 創立80周年記念会館リサージュ3F
テーマ 野沢温泉村のインバウンド事業
講 師 一般社団法人野沢温泉観光協会  
専務理事 兼 事務局長 森 博美 氏
一般社団法人野沢温泉観光協会
専務理事 兼 事務局長
森 博美 氏

1.野沢温泉村の現状

(1)概要

 野沢温泉村は、長野県の北部、国内有数の豪雪地帯に位置しており人口は約3,600人の村である。村の中心部には、旅館・民宿、商店、民家、入浴施設などが密集し温泉街を形成している。  村内では、38箇所の源泉から毎分1,530リットルの温泉が自然湧出している。西暦724年に温泉が発見されたと言われており、歴史の古い温泉地である。温泉街には、「湯仲間」と呼ばれる住民組織によって維持管理されている外湯(共同浴場)が13箇所ある。

 

外湯「大湯」外観

 
 
(2)中心部の進んだインフラ整備

 野沢温泉村は、降雪の多い年には3メートルを超える積雪を記録することもあるが、温泉街は建物が密集し、道路幅も狭いため除排雪が困難である。そのため、温泉街を中心に昭和37年に公共下水道が供用開始され、その後、灯油、LPGガスの地下配管埋設による熱エネルギーの集中管理が整備された。  

冬の温泉街(無散水融雪道路)

 また、温泉街の道路9,500メートルに無散水消雪設備(ロードヒーティング)を導入している。そのため、冬季であっても道路の除排雪を行うことなく、通行が可能である。 さらに、建物の屋根雪下ろしも大変なため、屋根にもロードヒーティングと同様な装置を設置し、雪下ろしの負担を無くすなどの対策をしている。
 平成27年3月14日に北陸新幹線が金沢まで延伸される。今回長野県で唯一、飯山駅が開業するため野沢温泉村では、公共施設の建て替えや直通バス運行などのインフラ整備を進めており、観光客の受け入れの準備をしている。

2.スキーは村の文化

 明治45年のスキー伝来の翌年に、野沢温泉にもスキーが伝わり、昭和25年には日本で3番目となるスキーリフトが建設され、民間組織のスキークラブが営業した。スキー場の発展により、雪に閉ざされた出稼ぎの村が、スキー場や宿泊や観光など冬の産業を手に入れた。その後、スキークラブは村に経営権を移管し村営スキー場として予算を取り開発やインフラ整備などを行い更なる発展を遂げる。しかし、村営スキー場は、ウィンタースポーツ人口減少などによる業績悪化に伴い、平成17年に民営化した。その後、指定管理者制度を用いた新しい会社において、さまざまな事業改革を行った結果、経理的に安定させることができた。
 私が所属している観光協会も当初は任意団体であったが、業績悪化に伴い行政主導による合同会社として民営化した。その後、観光協会は平成26年に一般社団法人に変更し、現在、第二種旅行業を取得し行政だけに依存せず、自ら収入を得る方策を立てた。

3.インバウンドの取組

(1)海外プロモーション

 野沢温泉村でも他の地方都市同様、人口減少が進んでいる。また、国内全体でスキーやスノーボード利用客が落ち込んだことにより、観光客も平成3年をピークに現在ではピーク時の1/3程まで減少した。そのため、野沢温泉村では外国人観光客の誘客に力を入れ、減少傾向にある国内観光客の宿泊枠を外国人観光客に埋めていただいている。
 外国人観光客誘客のためインバウンドは、10年くらい前から取り組みはじめた。まず、地元の宿泊施設が集まって「インバウンド協議会」を民間で立ち上げ、海外でのプロモーション行う際は、官民一体となり、同行する協議会代表が宿泊価格等の交渉を行えるようになった。また、県主導で行う事業「長野/新潟スノーリゾートアライアンス」にも加入し、県単位の組織で観光客の誘致を行うことにより、自ら汗をかくことなく

日本三大火祭りの一つ 野沢温泉道祖神祭り

会場や旅行会社の担当者の手配などがすべて準備された状態でプロモーションプレゼンができるというメリットを得ている。海外プロモーションでは、まず8月くらいにオーストラリアの冬の予約がほぼ埋まり、残りの予約をシンガポールやヨーロッパで埋めると秋口には外国人観光客の予約は終了となる。行政の調べでは、昨年のシーズンにおよそ2万人の外国人観光客が野沢温泉村に滞在した。しかし、観光協会で独自に各宿泊施設を調査したところ、延べ62,300泊/人となり、行政との数字には大きな違いが生じたが、多くの外国人観光客が訪れていることは間違いない事実である。

 さらに、観光協会の調査ではスキーシーズン中に野沢温泉村に外国人観光客が一番多く宿泊しているのが1月15日前後で、毎年およそ2,000人もの外国人観光客が訪れる。同日は日本三大火祭りの一つ「野沢温泉道祖神祭り」が開催され、ファイヤーフェスティバルとして外国人観光客を引きつけており、祭りの会場のほぼ半分が外国人観光客で埋まるほどで、昨年は片道車で2時間以上かかる白馬村から外国人観光客がツアーバス23台で乗り付けて祭りを見学するようになった。

(2)おもてなしと日本らしさ

 先にも述べたとおり、野沢温泉村では、毎年プロモーション活動のためオーストラリアの商談会に参加したり、旅行会社に訪問したりしている。その際に持参するのが、県内在住の外国人クリエーターが外国人目線で作成した英文のパンフレットである。これは野沢温泉に滞在している外国人が食事や観光などに利用できるよう、宿泊施設各所にフリーペーパーとして置いているものである。

 野沢温泉ではこれ以外にも外国人観光客へのおもてなしの一環として旅行会社が製作したガイドブックを

窓口に外貨の両替コーナーを設置

飲食店の協賛を得て作成しており、より詳細に食事処などを英文で紹介している。外国人観光客の多くは、宿泊先で夕食をとらずこのようなガイドブックを用いて街の中を散策する。しかしまだまだ飲食店が少なく、飲食店によってはカード払いできない店も多い。さらに外貨やカードを換金できるコンビニエンスストアがない。そのため観光協会では、平成26年12月15日から窓口での両替業務を開始した。現在、紙幣で6種類ほど両替をしており、外貨をその日のレートで計算し手数料を引いて日本円に換金するサービスを実施している。

 また、観光客の多くは、野沢温泉村を選定する際、スキーだけではなく、良質の温泉・日本的な町並みを条件に挙げていことから、野沢温泉では今、「日本型「和」のリゾート」をスローガンに掲げた取組を行っている。山間の小さな温泉地での日本らしさを残そうと、行政では「町並み整備」を実施し、屋根・壁の色の外から見える部分の改築や塗り替えに基準を設け、それに準ずる場合は補助金を受けられる制度を設けた。この取組は、現村長の「100年先のまちづくり」という100年後の町の風景を視野に入れたまちづくりを進めるおもてなしプロジェクトの一環である。

(3)国際大会開催

 野沢温泉村は、これまで長野オリンピック・パラリンピックやその他の国際大会に多くの関わりを持ってきた。さらに、スキー選手の育成にも注力し冬季のオリンピック選手を16名輩出するなど、日本のスキー界を常にリードしてきた。
  1995年に野沢温泉村ではインタースキー国際大会(インストラクターの国際大会で4年に1度開催)の誘致の機会を得た。しかし開催直前に、阪神淡路大震災が起こり、開催自体が危ぶまれる状況となったが、関係者やボランティアの方々をはじめ多くの協力を得て何とか予定どおり開催することができた。インタースキーには野沢温泉村の関係者がボランティアとして事務局や通訳などに多く参加したことにより、国際大会の実績と経験が評価され、1998年の長野オリンピックでも開催地として多くの外国人を受け入れた。今、多くの外国人観光客が野沢温泉村に訪れるようになったのは、おそらく1995年のインタースキーや、1998年の長野オリンピックでの経験がきっかけだったのではないかと考えている。
 2020年には、東京オリンピック/パラリンピックが開催される。今後、オリンピック関連については、準備期間を含めて「TOKYO」「JAPAN」という言葉が世界中に発信され、外国人の観光客の誘致につながるであろう。野沢温泉村の人たちは、冬期長野オリンピックをはじめ国際大会に関係するチャンスを得て積極的に関わることにより、行政、民間、外国人の方など人脈を得て、人と人との繋がりから貴重な情報や経験を培い、これらを活かしたプロモーション等を行うことで、現在の外国人観光客誘致に繋げることができた。
 これから東京オリンピック/パラリンピックや国際大会に関わる機会のある方々は、是非、積極的に人脈、情報、経験を得てほしい。ここで得た人脈、情報、経験などの積み重ねが大会後も、より多くの外国人観光客誘致に繋がる重要な手段になると考えている。

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