平成26年度地域産業振興講座第6回開催概要 
    「地域にIT企業が集まった!〜徳島県神山町〜」   

総務企画部企画課

日 時 平成26年9月10日(水)14:30〜16:00
場 所 電気通信大学
テーマ 神山プロジェクト 
〜ヒトノミクスから考える地域の未来〜
講 師 特定非営利活動法人グリーンバレー  理事長 大南 信也 氏

 

<講演概要>

特定非営利活動法人グリーンバレー 理事長 大南 信也 氏
特定非営利活動法人グリーンバレー
 理事長 大南 信也 氏

1.神山町で起こった“二つの異変”
(1)2011年度転入者が転出者を上回った

 徳島県神山町は、1955年に隣接する5つの村が合併して誕生、当時の人口は2万1千人であった。しかし、現在の人口は約6千人と典型的な過疎のまちである。
  このまちで最近起こった二つの異変に全国から注目が集まっている。
 その1つ目は、2011年度の社会動態人口(転入者−転出者)が増加したことである。その後、同数値は減少しているが、かつて100人近く減少していたことに比べ数値は大幅に緩和している。
 また、神山町の特徴として、転入者の平均年齢が30歳前後である点が挙げられる。転入者の年齢層が非常に若いため、多少人口が減少してもまちの活力は失われていない。

【徳島県神山町】 【講演の様子】
【徳島県神山町】  【講演の様子】  

(2)11社の企業誘致

 2つ目の異変は、2010年以降2014年8月までに、ITベンチャー企業など計11社が、神山町にサテライトオフィスを設置したり、新会社を設立していることである。これらの企業によって、空き家として放置されていた古民家が続々とオフィスに姿を変えている。
 さらには、大手IT企業の社員研修で神山町が活用され、社員が短期滞在することもしばしばある。  

 これらの異変は、神山町で移住交流支援センターや職業訓練事業などの運営を行う特定非営利活動法人グリーンバレーが中心となって実践する「創造的過疎」の姿として生まれたものである。

2.創造的過疎の考え方
 (1)創造的過疎とは

 創造的過疎とは、人口減少の内容に注目した考え方である。
 神山町のような中山間地域に若者やクリエイティブな人材を誘致することで、人口構成の健全化を図る。その結果として、地域での多様な働き方を実現し、農林業だけに頼らないバランスのとれた持続可能な地域を作るという考え方が、創造的過疎である。
 創造的過疎において大切なことは、過疎化の現状を受け入れることである。過疎化の現状を受け入れるとは、将来の人口を明確に数値化することである。明確になった将来の人口から、理想とする人口モデルに向けて逆算して対応していくことで、創造的過疎を実現できる。

 (2)神山町における創造的過疎

 神山町では、2005年の国勢調査をもとに年少人口(0〜14歳)に注目したモデルを作った。まず、単純に年少人口を15で割り、1学年当たりの人口を算出した。その結果、このままの人口減少が進行した場合の1学年当たりの人口は、2010年の28.9人から2035年には12.5人になることがわかった。
 これに対し、人口が減少する中でも2035年に1学年20人となるモデルを想定し、毎年何組の家族が移住してくることが必要か試算した。モデル世帯として、夫婦と子ども2人の4人家族が移住する内容で試算した結果、毎年5世帯20人の移住が必要であると試算できた。
 このように創造的過疎実現のための数値目標が明確になることで、やるべき取組が見えてくるのである。

【神山町の年少人口将来推計】
【神山町の年少人口将来推計】


3.神山プロジェクト

 神山プロジェクトとは、神山町で創造的過疎を実現するためにグリーンバレーが中心となって行っている取組である。 

(1)ワークインレジデンス

 2007年10月、移住のワンストップサービスを提供するために「神山町移住交流支援センター」が設置された。このセンターの運営は、以前から芸術によるまちづくりの一環としてアーティストの移住支援で実績のあるグリーンバレーに、神山町から委託されることとなった。  
 これにより、地域づくりに取り組むグリーンバレーに移住希望者の情報が集まることになった。加えて、移住希望者登録用紙を工夫し、移住希望者の夢、志、今までの仕事、神山での生活設計、ビジョンの情報を得られる内容とした。  
 こうした移住希望者の情報を生かし、地域にとって必要な仕事を持った人に、地域の空き家に移住してもらうことを始めた。これが「ワークインレジデンス」である。  
 ワークインレジデンスの例としては、ある空き家をパン屋さんすると決め、登録された移住希望者の中からパン職人を選び、地域にパン屋を作ったものがある。   

(2)サテライトオフィス

 さらに、ワークインレジデンスの手法を商店街の空き店舗に活用することで、地域の人が作りたいまちや商店街を実現することができるのではないかと考えるに至った。
 そこで、商店街の空き店舗をグリーンバレーが借り、内装などを改装してグラフィックデザイナー、カメラマン、映像作家などのクリエーターのオフィスを誘致することを目指した。
 こうした取組の中から生まれたのが「サテライトオフィス」の動きである。きっかけは、空き店舗の改装に携わった建築家を通じて、東京に本社を置くITベンチャー企業の社長が神山町に足を運んだことである。この社長は、訪問した際にサテライトオフィスを神山町に置くことを即決した。この決断から20日程度で当該企業の社員3名が神山町のオフィスで仕事を始めた。
 その後、豊かな自然の中で、東京の本社とテレビ会議を通じて仕事をする様子が、テレビ番組で紹介されたことも影響し、ITベンチャー企業の神山町への流入は途絶えることなく現在も続いている。
 そして現在、東京の本社の人間が神山町に移住する例や、開発拠点を神山町に置き新たな求人を行う企業も現れている。その中には、最新の高画質映像の保存事業を行う企業もあり、古民家を改修しオフィスとして使用している。ここでは、現在20名のエンジニアが働いているが、今後30名の追加雇用が生まれる予定である。

(3)神山塾

 グリーンバレーでは、地域の後継人材育成を目的として、職業訓練事業「神山塾」の運営も行っている。神山町で6ヵ月間の訓練を受けるこの事業に参加する人は、「独身女性」「20代後半〜30代前半」で、東京及びその周辺出身のクリエーターが圧倒的に多い。デザインや編集ができる人、カメラワークが上手な人が集まって来ている。
 2010年12月にスタートしたこの取組から、これまでに77名が巣立ち、その内約5割の人が神山町に移住している。移住者の中には、サテライトオフィスで採用される人、空き店舗で起業する人がいる。
 加えて、この中から多くのカップルも誕生し、結果として婚活の場にもなっている。
 以上を踏まえ、日本が抱える課題である若者の雇用と少子化に関する答えがここにあるのではないかと、注目を集めている。

【新しい働き方】 【神山塾】
【新しい働き方】  【神山塾】 

4.今後の展望

 ワークインレジデンスの実践や神山塾を通じた人材育成を通じて、数年前まで空き家であった店舗に、オフィス、映像作家や演出家などのクリエーターが集積し、神山町にしかない商店街が生まれようとしている。新しく入ってきた人と、地元の人の要望によりさらに新しいお店も開店した。その例が、昨年12月に開店したフレンチビストロとピザ店である。
 フレンチビストロでは、地元のパン屋で焼いた有機小麦と天然酵母を使用したパン、移住者したデザイナーの奥さん経由で仕入れる有機栽培のコーヒー、地元の有機栽培野菜などを提供している。また、ピザ店では、有機栽培小麦を使ったピザを提供している。
 ここに有機農産物という一つの流れが生まれようとしていると感じている。これを戦略的に展開するため、グリーンバレーではワークインレジデンスで有機農業者を地域に集めたいと考えている。加えて、有機農産物を扱う飲食店がさらに数箇所できれば、神山町は「オーガニックフードのまち」になると思う。
 中山間地域に新しいビジネスを創出しても、やはりこうした地域の産業の本丸は農業である。農業を活性化する組立てをしていかないと人口減少の中で中山間地域は残って行くことができない。グリーンバレーの取組が、神山町の農業に影響を与えることができると考えている。  

 最後に、皆さんにも好きな場所があると思う。好きな場所をそのままにしておいては、よい方向に変えていくことはできない。好きな場所を素敵な場所に変えていくことが必要である。「すき(好き)」な場所に「て(手)」を加えることで「すてき(素敵)」な場所になる。
 手を加えることは、行動を起こすことである。行動を起こせば、まちはいい方向に向かうと信じて行動を起こすことが大切である。


特定非営利活動法人 グリーンバレー
◇住所 〒771-3310  徳島県名西郡神山町神領字中津132   
◇URL http://www.in-kamiyama.jp/

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