平成26年度地域産業振興講座第4回開催概要   

総務企画部企画課

日 時 平成26年7月18日(金)
場 所 中小企業大学校東京校2号館1階 2102教室
テーマ 「世界>日本>地域:日本を活性化する地域産業振興に必要な自 治体職員のマインドとスキル」
講 師 ブレークスルーパートナーズ株式会社 
マネージングディレクター 赤羽 雄二氏 

 

1.自己紹介

ブレークスルーパートナーズ株式会社マネージングディレクター
赤羽 雄二氏
ブレークスルーパートナーズ株式会社
マネージングディレクター
赤羽 雄二氏

 高校・大学とアメリカンフットボール部に所属し、大学卒業後、コマツで建設現場用の超大型ダンプトラックの設計・開発に従事していた。2年間、スタンフォード大学 大学院に留学(機械工学修士)し、日本に帰国した後、マッキンゼーに入社した。14年間、日本企業と韓国企業の経営改革、経営幹部育成、新事業創造などに取り組んだ。
 最初の4年は日本だったが、その後10年間はソウルと日本を往復する生活を500週連続で送りながら、韓国のトップグループの経営改革を支援した。マッキンゼーは、ニューヨーク、ロンドン、シドニーやバンコクなど世界中にオフィスがある。15ヶ国以上からコンサルタントを100人以上呼び、数百人以上のクライアント経営改革プロジェクトメンバーと多数のプロジェクトを遂行した。
 マッキンゼーに入ったばかりの時、学ぶことが多く、忘れないように書き留めるために「A4用紙へのメモ書き」を始めた。これが後に「ゼロ秒思考」のA4メモに発展する
 2000年にシリコンバレーのベンチャーキャピタルに入ったがすぐスピンアウトし、創業当初からのきめ細かな支援を特徴とするブレークスルーパートナーズを共同創業した。起業したいという方と数週間から数か月議論し、これならという事業構想を一緒に作って会社を立ち上げる。ベンチャー共同創業、経営支援に加え、中堅・大企業の経営改革、経営幹部育成、新事業創出にも深く関わり「日本発の世界的ベンチャー、世界的企業」を生み出すべく活動している。
 A4メモ書きの集大成として昨年12月に「ゼロ秒思考」※(文末【参考資料】参照)を出し、幸い7万部のヒットとなった。今年4月には、2008年に総務省から出した「事業計画作成とベンチャー経営の手引き」)※をベースに「7日で作る事業計画書」※を出版した。メモに思いをぶつけている間に、7日間で事業計画が書けるよう、特別の工夫をした。

2.ベンチャー共同創業・経営支援以外の活動実績

 ブレークスルーパートナーズでは学生との接点が多い。東日本大震災の直後、ブレークスルーキャンプ2011 Summerを企画・運営し、学生23チーム100名が2ヶ月のアプリ開発合宿に参加した。協賛企業を募って宿泊、オフィス、サーバー等すべて無料にし、食費補助、交通費補助まで出すことができた。通常のビジネスプランコンテストとは異なり、23チームすべてが実際に動くアプリのデモをし、大きな話題を呼んだ。他にもTRIGGERをはじめ、多数のビジネスプランコンテストで基調講演、審査員、企画・運営等に関わっている。
 さらにJICA(国際貿易協力機構)のプログラムで2010年から毎年12月にムンバイ(コルカタ)で事業計画作成ワークショップを行っている。このワークショップではインド製造業の幹部(40歳〜50歳)100名以上に一人ずつ15ページ程のビジネスプランを作成していただいている。ビジョン、アクション、実行体制等々を個別に検討し、6時間後にチームで発表し、その後全体発表となる。筑波大学名誉教授の司馬先生が支援しておられるプログラムの一部をご支援する形になっている。
 また、昨年、東京都中小企業振興公社において、中小企業オーナーとその子息を50社募り、事業承継の講座を開催した。そこでは、会社のビジョン、戦略、アクションなどについて考え方をご説明した上でメモに書いていただき、組織運営、コミュニケーションなどについても助言した。質問も毎回数十回出て、活発なやり取りが続いた。オーナーとその子息の関係は決して健全なものではなく、このセッションに参加して初めてまともにビジョン等議論できた、という話も多数聞いた。
 学生、20〜30代との接点が非常に多いので、その上の層向けに「40歳からのネクストチャレンジ!」※というプログラムを日経新聞主催で6月から開催している。すでに第一期111名、第二期121名が参加し、自社での経営改革推進や自身のキャリアアップに向けて、戦闘力を上げる取り組みを続けている。
 現在、本業のベンチャー共同創業・経営支援に加え、製造大企業の経営改革や新事業創出にも取り組んでいる。これは、ここ何年か、製造大企業の業績が悪化しており、経営改革のニーズが大変に高まっていること、経営改革および経営改革チェンジエージェントの育成に関して、国内でも特別豊富な経験を積んでいることによる。
 それに加え、中小企業への助言、学生・女性の起業支援などにも積極的に取り組んでいる。

3. 今、日本がさらされている危機

 日本が全盛期だった1980年代、米国はなぜ日本が優れているのか、どうやって勝つべきか、国家をあげて競争力強化の研究をした。その結果、多くの施策が打たれたが、特に、シリコンバレーの人口の過半が中国・インドなどの外国系と言われるほどに、世界中から優秀な人材を集め、起業しやすくし、リターンを得て再度投資されるという好循環が働くエコシステムが作り上げられた。彼らはIT系企業の中核人材の多くを占め、子息や新たな留学生など最優秀な人材がスタンフォード大学、MIT等のトップスクールに行き、多くが起業し、再生産を加速する仕組みが確立している。
 一方日本では、90年代まで世界的ブランドであった電機系製造大企業の競争力はその後急落し、自動車メーカー・重電メーカー等はまだ好調であるものの、多くの企業は米国企業の高業績・高時価総額とは比較できない水準にある。日本にも、もちろん急成長を遂げている高収益企業もあるが、数も規模もスピードも、米国発の世界的企業とは比べるべくもない。
 日本が国としてやるべきことは、この深刻な事態を直視し、抜本的な施策を同時並行かつ10年以上の長期にわたって進めていくことだと考えている。挽回策は、学校教育改革、英語教育の根本的見直し、規制緩和、特区実施、法人税引き下げ、政治・省庁改革、企業経営改革、M&A促進、起業促進改革などであり、一刻も早く本格的にスタートしなければならない。
 日本的よさを維持しつつどう改革を進めるべきか、という議論もされているが、そういう議論をしている間にさらに危機が拡大している。まずは、他国に大きく劣っている部分へのメスを一刻も早く入れていきたいと考えている。
 

4.リーンスタートアップというアプローチ

 地域での事業立ち上げとして、リーンスタートアップというアプローチが非常に有効である。リーンスタートアップは、安価で非常に使いやすいクラウドや開発環境の整備、ソーシャルメディアの普及などにより生まれたアプローチであり、ベンチャーだけではなく、大企業でも中小企業でも使える方法である。

 具体的なステップは、
@ 顧客・ユーザーが泣いて喜ぶ「価値仮説」と1人の顧客・ユーザーが3人呼ぶ「成長仮説」をそれ
    ぞれ1000字程度で書く(14フォントでパワーポイントパラグラフ5〜7個くらいで1ページ)。
A それぞれのターゲット指標を決める。(例えば、使い始めたらその日30分行う。または、今日行
     ったら、明日も行うとかターゲットを決める)
B それら仮説を検証する実証ミニプロダクトを作る。(例えば、スマホネイティブアプリの替わりにパ
     ソコンのウェブベースで行う。また、検討中のサービスを表す紙芝居を作って見せる。数日から
     遅くとも2〜3週間以内に作る)
C さっと検証して、違えば微妙にピボット(方向転換)して(例えば、ターゲット顧客を少し見直した
     り、狙っている機能を少し修正したり、見せ方を少し変えるなど)価値仮説、ターゲット指標をも
     う一度設定する。
  このやり方を「超高速仮説構築・検証・修正型商品開発」と呼ぶことにした。ベンチャーだけでは
     なく、大企業でも同じように使うことができる。1人の顧客・ユーザーが感動して商品を広めてく
     れるくらいでないと商品中々広がっていかない。

 また、例えば3人のチームで企画をする際、個人の意見とチームとしての意見をうまくまとめることができないとチーム内で摩擦を生じる。これを避けるため次のような形でスムーズに進めることができる。

@ 企画案を1人10〜20個程度出し、○×△の評価をつける。
A その後、3人がそれぞれ自分の一押しニ押し、三押しを出すと、9個の案がでる。
B その上で、3人で案をさらに改良しながら評価すれば、チームとして「これが良い」という企画が
    完成し、選ばれる。

5.地域産業振興に必要な問題把握・解決力の強化方法

 地域産業振興を進めるためには、企業が続々と生まれ急成長する環境を作ったり、中小企業がお互い切磋琢磨し、協力しあって、産業を興せるような環境を作ったりが必要になる。
 そのためには、新しいタイプのインキュベーションセンターや海外との連携なども必要になる。従来のインキュベーションセンターには、必要な支援能力、支援経験を持つ人材が不足で、形骸化していることが多い。海外との連携は、アンテナが低く、幅広く探すことができないだけではなく、対等な立場で激しく交渉することに慣れていない。
 それに対して、問題を発見する感度、アンテナの高さが大切であり、次々に質問しながら問題点を掘り下げ、一気に本質を見抜く探求心、洞察力が重要となる。
 一見難しそうに思える問題把握・解決力であるが、実は「ゼロ秒思考」のA4用紙へのメモ書き※により確実に強化できる。もちろん本気で成長しようと思えばであるが、驚くほど成長できる。
 この「メモ書き」を続けると、もやもややイライラが解消し、誰でも頭がよくなったと実感できるようになる。これは、人は本来、誰でも頭がいいにも関わらず、気になることがあると整理できなくなって、本来の力を発揮できていないからだ。

@ A4の用紙を横置きにして左上にタイトル、右上に日付を書く。
A  その下に、4〜6行、1行20〜30字を書く。自分の夢、悩み、嫌だったこと、実行したいことなど
     何でもよい。包み隠さず書く。嫌な相手の名前もぼかさず書く。1ページ1分のスピードで、毎日
     10〜20ページ書く。
B 書いたメモは、7〜10個のカテゴリーに分けたクリアフォルダーのどれかに寝る前に投げ込む。
      厚くなってこれ以上入らない場合は、フォルダを分ける。
C 書いたものは見返さない。捨てずに取っておく。

 「ゼロ秒思考」のA4メモ書きは、頭のもやもやを 即座に言語化するトレーニングだ。もやもやが解消されると、何をすべきか明確になり、頭がシャープになる。3週間くらい毎日10〜20ページ書き続けると、かなりの変化が生まれる。例えば、チーム  ミーティングで前は理解しづらかった人の発言が非常にわかりやすくなったり、自分の発言、提案が以前より通りやすくなったりした、という嬉しいフィードバックよくいただく。
 メモ書きを半年以上、すなわち数千ページ書くと、物事を瞬間的に判断できるようになる。A案・B案・C案とそのメリット・デメリットが浮かんで、どの案が良いか素早く判断できるようになる。
 このA4メモ書きは、実際に頭がよくなる世界一シンプルなトレーニングだと考えている。「ゼロ秒思考」が7万部以上出ているので、今まで多分5万人以上が実践し経験したと思う。効果があり、かつ時間もお金もかからないという利点がある。迷いがなくなり自信が生まれ、優先順位が明確になることから、アクションも早くなる。

 重要な課題に関しては、多面的にメモ書きすることが重要である。多面的とは、こちら側からあちら側から、中から外から、上から下からの視点でメモに書くことで
1.今まで見えなかった側面がはっきり見える。
2.十分考えていなかったことをしっかり考えることができる。
3.理解不能と思っていた相手の行動、絶対いやだと思っていた相手・自分の行動への 理解が深
     まる。別の見方ができる。
4.全体としてもやもやが整理でき、新しい自分としての取り組みができる。

 これにより、鏡で映したかのように自分自身を見ることができ、他では得られない発見がある。
 A4メモ以外としては、問題把握・解決力を鍛える方法として、物事を明確に整理する「フレームワーク作成」やチームの生産性が飛躍的に上がる「ホワイトボードを活用したトレーニング」などがある。

6.コミュニケーション力強化のポイント

 コミュニケーションの大前提は、相手の話を最後まで聞くことである。相手の話を最後まで聞くだけで、相手との関係は極めてよくなり、意思疎通もできる。むずかしいことは何もない。
 コミュニケーションの本質は「相手への愛情、関心」+「平常心」だと考えている。相手に何か重要なことを 言うかどうか迷う時は、言うことのメリット・デメリットをメモに書く。整理してみると、自ずと何が適切か見えてくる。
 また、自分自身のことは中々わからないので、バランス感覚を身につけるため、何でも相談できる相手を同年齢、5歳年上、10歳年上、5歳年下で数名ずつ確保しておくことも必要である。各年齢層で候補5,6名を夕食等に誘って話をすると、そういう相談相手になってくれそうかどうか、見えてくる。
 よいコミュニケーションとして、話の途中では相づちを打ち、最後まで聞いたら、理解した内容を簡単に整理して話し、確認する。
 最後に、コミュニケーション上、非常に効果的なものとして、ポジティブフィードバックの実践をお勧めしている。むずかしいことは何もない。ただ、どんな小さな事でも褒めたり、感謝したりするだけだ。あらゆるコミュニケーションをポジティブなトーンで行う。費用が全くかからず成果は大であり、しかも相手には感謝され、すべてが好循環となる。

7.今後に向けて

 今、日本に必要なのは経営革新をリードし、成長し続けるリーダーである。リーダーに必要な資質は、熱意、向上心、柔軟性と考えている。
・熱意とは、絶対に成功させるという断固とした意思、情熱である。また、事業ビジョン、事業構想が
  明確で、顧客について何時間でも語ることができることが必要である。熱意がないと岩を砕くこと
  はできない。
・向上心とは、成長意欲が強く、誰からも学ぶ謙虚さ、素直さが必要で、向上心がないと成長しない。
・柔軟性とは、状況変化、方針転換等に苦労せず、スムーズに対応できることだ。


 リーダーシップとは、命令することではなく、周りが慕って自然についてくることである。人の話を聞くことが、すべての出発点となる。ビジョンを示し、困難に立ち向かう勇気を生み出し、沈着冷静に指示を出す。さらには、危機に際して、常に平常心で優先順位付けを行い同時に複数のことを処理できることである。
 意欲、向上心、エネルギーは伝染する。強い人に折りにふれて接し、エネルギーを注入する。
 成長し続けるリーダーが牽引し、日本発の世界的ベンチャーが地域からも数多く創出され、世界的企業となり、日本が再び元気になることを願っている。


【参考資料】
「ゼロ秒思考」・メモ書き
「事業計画作成とベンチャー経営の手引き」
「7日で作る事業計画書」
「40歳からのネクストチャレンジ!」

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