平成25年度地域産業振興講座(第10回)開催概要

   NPO法人コミュニティビジネスサポートセンター代表理事 永沢映氏  

総務企画部企画課

 

日  時 平成26年1月29日(水) 16:10〜17:40
場  所 電気通信大学 創立80周年記念会館リサージュ3F
講  師 NPO法人コミュニティビジネスサポートセンター代表理事 永沢映 
演  題 「コミュニティビジネス成功のポイントと行政の役割」

 1. いまなぜコミュニティビジネスなのか

NPO法人コミュニティビジネスサポート 代表理事 永沢 映
NPO法人コミュニティビジネスサポート
代表理事 永沢 映

(1)はじめに
 本日は行政がコミュニティビジネスという手法を通じて主体的に関わり、まちづくり、地域活性化の成果をあげてきた事例を中心にコミュニティビジネス成功のポイントと行政の役割についてお話しする。これらの事例は予算、労力をあまりかけずに、受講生の皆さんがそれぞれの街に持ち寄って成果を目指していけるものではないか。  
 総務省調査によれば、全国にはNPO法人が約49,000法人あり、その約半分の25,000法人が年商500万円以下。年商500万円というのは民間ではやっていけない数字。ただ、そういったセクターが何とか自立、継続をミッションとして事業化したいという動きがある。また、中小企業庁の創業補助金などで創業が増加している中、いわゆるベンチャーのように大きく稼ぐのではなく、地域課題解決・社会貢献を目的とした創業が増えている。国も複数の省庁が経済的な視点、雇用創出、市民参画など様々な視点からコミュニティビジネスを推進している。


(2)コミュニティビジネスの捉え方

 コミュニティビジネスとは「市民が主体となり地域の課題を事業の手法で解決するもの」である。ここで第一に考えなければならないことは、生活課題・地域課題という視点(マーケット・イン)がないと成立しないということ。
 例を挙げる。ある豪雪地帯の集落を抱える自治体が、買い物難民対策として宅配サービスをやろうと準備していた。ところが実際に住民の声を聞くと、「冬場の買い物は大変だが楽しみなもの。外に出るきっかけとなり、会話をする機会でもある。物を買うことは目的の一つに過ぎない。本当に困っているのは雪かき。」との回答だった。買い物難民だから宅配が必要という先入観を捨て、生活者が何に困っているかを突き詰めないと事業の可能性を潰してしまう。
 また、待機児童の問題については、待機児童の数で検証しがちであるが、必ずしも数が重要なのではない。「待機児童にはなっていないが本当は預けたい。預けているがサービスに満足していない。深夜まで営業して欲しい。食事の栄養管理をきっちりとやって欲しい。」などの生活課題解決へのニーズを拾い上げれば割高な料金でも事業が成立し得る。


(3)全国で取り組まれている地域課題

 全国で最近話題となっている地域課題として、以下のようなテーマが挙げられる。殆どのコミュニティビジネスは、どれかをキーワードとして括ることができる。
@地域コミュニティの希薄化、地縁組織・団体の機能低下
A高齢化、高齢化に伴う社会の環境整備・変革が不十分
B待機児童問題、女性の就労、ワークライフバランス
C商店街の衰退と空き店舗活用の必要性
D地域ブランド化、地域の魅力発見に伴う観光集客 

2. 地域をデザインする仕掛けをする(事例紹介)

 (1) 人材育成からのコーディネート
 どこの自治体でも大なり小なり講座等の形で人材育成はしている。それをどう評価しているかと言えば、集まった人数で見ている。しかし、本当に大事なのは、その講座の受講生から何人が実践したかということ。それは講座の企画サイドがどうコーディネートするかにかかっている。具体例を二つ挙げる。
 最初の例は、長崎県島原市。「この指とまれ」の地域連携。島原市は平成3年からの雲仙普賢岳噴火による被災地として人口減、観光客減をはじめ、地域の停滞に見舞われていた。駅周辺の商店街も約1/3が閉まっているという状態だった。また、被災地であったため国などから支援され続けた結果、10年ほどの経過とともに住民自身に市民の力で街をなんとかしようという意識が薄くなってきてしまっていた。
 そこで島原市役所の発案で市民にコミュニティビジネスを学んでもらい、やる気のある人を巻き込んでいこうというプロジェクトが動き出した。最初の勉強会では生活課題を洗い出し、高齢化、空き店舗などいろいろ出た。次ぎに優先順位をつけ、観光客を増やすことをテーマとした。観光客が増えれば空き店舗も回復する、働き場もできるなど相乗効果も大きいと考えたからである。
 観光客を呼ぶためのコンテンツは、130種類以上という国内でもトップクラスの種類が採取できる薬草とした。勉強会のメンバーから3つのグループが動き出した。薬膳料理でホテル、飲食店を巻き込んだグループ、薬草の効能を活かした薬湯を開発するグループ、自慢の土産として薬膳のお菓子を開発するグループである。結果、薬草がきかっけで連携している個人・企業は約200社となり、薬草プロジェクトで働いている方、事業に関わっている方は70人以上となった。つまり、課題と資源にフォーカスして、そこから参加者それぞれの発想力を活かしながら、うまくナビゲートできればチーム力という形になる。そして商工会議所、企業、税理士などの専門家も支援しやすくなる。逆に住民からの第一歩がないところで専門家から促されても起業にすら至らないことになり兼ねない。
URL: http://www.city.shimabara.lg.jp/kenkohanto/
 もうひとつの例は、千葉県我孫子市の「NPO法人ACOBA」。団塊シニアのサポーターを担い手にするという事例。
 我孫子市は平成14年当時、人口約13万人のうち団塊世代の男性が約5,000人。彼らがこのまま年金生活者になってしまうと市の財政は破綻するという試算が出ていた。そこで団塊世代層に定年後、地域での生産者になってもらうことをコミュニティビジネスで推進することにした。団塊世代の方は、サラリーマン経験からそれなりに経験・知識もあり何かやりたいが、「今更プレーヤーにはなりたくない。サポーターぐらいがいい。」と考えていた。また、「名刺と肩書と事務所があれば参加しやすい」との意見が多かった。
 そこで、コミュニティビジネスを学んだ市民が主体的にNPO法人という受け皿を作った。事業プランを考えた者には、同意するメンバーが3人以上集まれば、NPO法人の何々事業部長という肩書が使えるようにした。事業部長という肩書は、プライド、責任の重さのバランスが心地良いようだった。結果、中間支援団体(NPO法人ACOBA)に65名が就労、さらに市内にCB事業者が約30事業者ほど誕生している。この例でのポイントは、「明確な地域課題を伝える」、「参画しやすい示し方をする」、「サポーターを活かす」といった点である。
URL:http://www.acoba.jp/


 

 (2) テーマを絞った委員会、協議会計式からのスタート
 商店街ではよく委員会、協議会といったものが作られている。しかし、会議によってどんな成果を出すかが重要である。目的が、個店の売上を伸ばすことなのか、人が多くやってくることなのかによって品揃え・価格帯などの方法論は異なってくる。前者であればネット販売に注力すれば、必ずしも来街者の数は求めなくていいのかもしれない。ここでは、行政が地域にとって必要な方向性をある程度デザインした上で、委員会を方向性の検証、住民の合意形成の場として活用し成果を出した事例を紹介する。
 埼玉県蕨市は市民が中心となる活性化の仕組みを作りたいと考え、平成20年より「元気な商店街づくり検討委員会」を2年間開催し、コミュニティビジネスによるまちづくりを議論した。その結果、当時の蕨市商連を解散し、新しい組織、一般社団法人蕨市にぎわいまちづくり連合会を作った。ここでは、元気な商店街とはおいしいお店や飲食店が連なっていることと定義した。住民の中には「飲食店をやってみたいが、経験も浅く、銀行借入もできない。大きなリスクもとりたくない。」という主婦やサラリーマンの数が多くいた。それで始めたのがワンデーシェフレストラン「ぷらっと」。店は空き店舗を活用して開設。
 仕組みはこうだ。飲食店をやりたい人にはまず、屋号を決め、食品衛生責任者の資格を取ってもらう。3ヶ月先までの希望日を調整し、半日5,000円で「ぷらっと」を借りる。メニューは和食でもラーメンでもカレーでも何でもいい。ここでお客様の反応を見ながら飲食店を体験する。自信が付いたら独立してもらう。その際、蕨市の空き店舗補助金を活用できる。つまりリスクをかけずにインキュベーションを行うということ。これまでのイベント、商品券、祭りなどの商連活動から、市民を巻き込んだビジネスを進めている。
URL:http://www.warabi.ne.jp/~machiren/index.html

 (3) 委託・補助などの予算をベースとした機会の活用
 最後に国、都道府県などの補助金、委託などを有効活用したコミュニティビジネスの手法を紹介する。こういった予算は普段集まらないメンバーを集めることができる。また、地域の関係者にとって国などの役人が関わるということが大きな刺激となる。
 館山市は観光客、特に海水浴客の減少により疲弊していた。ちょうど国交省の南房総まちづくり予算があったことから、この予算を単なる調査研究に留めず、具体的な成果を出す取り組みにしようと考えた。
まず、目的を明確にした協議の場を作った。参加者は観光協会、商工会議所、NPO、Uターン・Iターン組の代表者、商店街の代表者など約30名。一部のメンバーが途中退席するという事態が発生したが、逆にやる気のあるメンバーだけが残ったことが大事だった。そして課題(解決したい問題)は観光、特に修学旅行の増加に絞り込んだ。
 次に解決に向けた組織として、当時同市で活動していた4つのNPO法人と連携。それまで4つのNPO法人はバラバラにビーチコーミング、自然体験、戦争遺跡等の案内、ITによる飲食店案内等を行っていたが、NPOが連携し様々な観光プログラムのバリエーションで最大3泊4日までの宿泊者向けのプログラムを作った。組織内での役割と責任を明確化し、資金調達などの事業計画も具体化させた。そして、PRは自治体、旅行会社などが行った。修学旅行などは自治体の信用力を背景にPRした方が効果的。結果、平成15年に4校だった修学旅行が最大の年には約60校にまで増えた。地元企業や商店街などの協力も徐々に得て、宿泊施設、土産もの屋、飲食店の売上も相応に伸びてきた。
 この取り組みは、低予算で可能な上、民間主体でチャレンジしやすく、モチベーションの担保・民間スキルの活用が可能といったメリットがある。一方で、全体的なコーディネート役である市役所の担当者の異動による関係者間のコミュニケーションの停滞、中心人物の属性に依存、利益分配・活用の透明性が必要といった欠点・課題がある。



  最後に、コミュニティビジネスは、「誰が」、「どこで」、「何をやるか」ということが同じ割合で重要。例えば、葉っぱビジネスで有名な「いろどり」を誰かがどこかの地域で真似をしても成功するとは限らない。むしろ上手くはいかないといえる。つまりコミュニティビジネスのビジネスモデル、成功事例を他地域にそのまま移転しようとしてもなかなかうまくいかない。地域の特性、プレーヤーの属性・思考などに合わせて柔軟に変化させる必要がある。そこがコミュニティビジネスが競争力のある事業となっている要因の一つでもある。
 また、コミュニティビジネスによる地域の活性化は、供給側、推進側の組み立て方によって大きく、その魅力や効果も違ってくるといえる。

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