平成25年度地域産業振興講座(第4回)開催概要(2)
  

総務企画部企画課

 

日  時 平成25年8月2日(金)
場  所 中小企業大学校東京校
講  師 株式会社日本レーザー 代表取締役 近藤 宣之
演  題 夢と志の経営 〜社員の成長が企業の成長〜

1.はじめに

 近藤社長
株式会社日本レーザー 
代表取締役 近藤 宣之氏

 日本では毎日、100社以上の会社が潰れている。一方で100年以上続く会社もある。いい経営をすれば長く繁栄できる。本日は、潰れかかった会社を再建した私自身の経験を踏まえ、会社は何故潰れるのか、どうしたら再建できるのか、そもそも会社は誰のものかといったテーマでお話ししたい。
  現在私が代表を務める鞄本レーザーは、レーザー機器を取り扱う専門商社である。日本電子鰍フ子会社として歴史のある会社であるが、バブル崩壊等の外部環境の変化に対応できず、1993年には債務超過となった。親会社の保証があっても銀行から融資を断られ、倒産寸前の状態だった。当時、日本電子鰍フ役員だった私は、再建を命じられ、親会社から鞄本レーザーに派遣された。
子会社の社員からみれば面白いはずもなく、大事な商権と社員を持ち出されるという痛い目も見た。しかし、失った商権に変わる新規取引先の開拓・可能な限りのコストカットとともに経営の仕組みを変え、1年で黒字化を果たした。翌年には日本電子鰍フ役員を退任し背水の陣を敷いた。社員も一丸となって協力してくれ、再建は加速度的に進んだ。

2.企業破綻の共通要因 〜負けに不思議なし〜

 企業破綻には共通の要因がある。それは、(1)経営環境の変化(バブル崩壊等)に対応できない、(2)顧客の減少と連続した受注不振、(3)社内に危機感がなく、情報の共有化がされない、(4)迅速な抜本策の回避(先送り)、(5)不振の原因を外部環境のせいにする、というものである。破綻寸前に追い込まれた当時の鞄本レーザーもそうだった。毎日報道される企業破綻を見ても殆ど同じパターンである。
 (1)〜(5)の中でも特に留意して欲しいのが(5)である。すなわち、全ての原因は自分たちの外にあると考えることである。例えば、経営者が「昨年と同じ売上だが円安で赤字になる。これは外部環境のためである。為替は政府に何とかしてもらうしかない。社内にも銀行にもそれで納得してもらう。ボーナスもなくす。」こんなことをしたら社員のモチベーションが上がるはずはない。
 では、変化に対応する方法は何かと言えば売上アップである。売上アップには社員がモチベーションを上げ、新しい商品・サービスの開発、新規顧客開拓を行う必要がある。輸入が多い当社では、米国で新たな商権を獲得するなど新商品を導入することにより、商品別の売上構成を変化させ、円安による大幅な減益のリスクを回避した。結果、今年度も利益を確保して、20年連続の黒字経営となる見込みである。  

3.鞄本レーザー再建の要因 〜勝ちに不思議あり〜

 再建の手順はまず損益計算書をきれいにし、次にバランスシートをきれいにすることである。再建は2年が勝負である。鞄本レーザー再建は、銀行の融資拒否、商権・人材の流出など修羅場の連続だった。売上を上げ、赤字を解消し、復配するまでに2年を要した。バランスシートの改善には更に2年かかった。その途上で取り組んだ経営の仕組みの改善は次のものである。
 (1)枠組みとルールと基本の徹底(*1)、(2)能力と努力の成果に応じた処遇体系(*2)、(3)社長の背水の陣と社員のやる気(*3)、(4)新規商権・商品開発
 しかし、これで再建できるかというとそうではない。(1)〜(4)に加えて、(5)幸運と好循環 が必要である。これは運任せということではない。人間は正しいことをとことんやっていれば必ず運が向いてくるものであるということである。

(*1)@時間を守る、A約束を守る、B整理・整頓をする、C自分のためではなく、人のために働く、D周りの人の支援に感謝する、E問題は全て自分の中にあるとし、勤勉に働くなど。
(*2)当社の処遇体型は単純な成果主義ではない。「目に見える貢献(粗利等)」と「目に見えない貢献(営業に対する技術サポート等)」を社員同士が話し合い貢献度を決める仕組み。
(*3)近藤社長は就任2年目、日本電子鰍フ役員を退任。また、国籍、年齢、性別、学歴に関係なく、志と熱意にあふれた人材を採用するとともに成果に応じた処遇体系を確立した。


4. 経営者がやらなければならないこと

 経営者の仕事は社員がやる気を出して働く環境を作ることである。具体的には次のことである。

(1) 社員が頑張れば利益をあげられるビジネスモデルの構築

   経営者の仕事は円高・円安などどんな環境変化が起きても、新商品、新商権を獲得し、社員が
  頑張れば利益が出るビジネスモデルを構築することである。

(2) 社員のモチベーションがあがるような仕組みの構築と良い企業風土の醸成

   どんな商品であっても成長期、成熟期、衰退期がある。衰退期に次の商品を考えても遅い。
  同じ商品を同じお客・同じマーケットに売ると必ず売上は落ちる。どんな商売であっても常に、
  違った商品・サービスを違ったお客に違った方法で売ることを考えねばならない。

(3) 率先して人材を人財に育成

   企業の構成要素はヒト・モノ・カネ・情報だが、これを横一列で捉えてはいけない。モノ・カネ・
  情報を底辺とする三角形の頂点にヒトがいる。モノ・カネ・情報を組み合わせて新しい商品を
  生み出すのはヒトである。能力のある人財を登用し、その成長を助けることが差別化の最大の
  要因となる。

  これらは決して簡単なことではない。だからこそ経営者には、不振の原因を外部のせいにせず、社員を守るという覚悟と執念が必要である。

5.会社は誰のものか

 会社は社員と顧客のものである。そして、社員が高いモチベーションを持って仕事に取り組まないと顧客満足は得られない。だからこそ社員のモチベーションをどうやってあげるのかは、経営者の大きな課題である。人生の喜びは、(1)周りから必要とされる、(2)周りの役に立つ、(3)周りから感謝される、(4)周りから愛されることである。そのうち(1)〜(3)は仕事により得られる。つまり、企業の存在理由は、「働くことで得られる喜びを提供すること」、「自己実現の機会を提供すること」、「社会の役にたつこと」である。但し、企業の役割は舞台を作ることであってどう踊るかは本人次第である。
 社員のモチベーション高揚には、まず「赤字を出さないこと」が要件である。粉飾は法律上の犯罪である。一方、赤字は将来を賭けて就職した若者を預かる経営者にとって、人として、経営者としての犯罪と言えるのではないか。当社は再建後20年間黒字を続けており、私は赤字を出せば辞任すると決めている。その他の要件としては、「自主的に仕事ができる仕組み」、「世間並の待遇とやる気の出る制度」、「連帯感・一体感を高める祭やイベントなどの工夫」、「社長や上司が明るい笑顔を社員に向けること」などわくわくとした雰囲気を作ることが必要である。
 当社では徹底したコミュニケーション強化により社員満足(ES)を上げる工夫をしている。その一つは、毎週末全社員からメールで送られる「今週の気づき」である。業務報告、提案、要望だけではなく、同僚の努力する姿などの様々な「気づき」が寄せられる。土日を利用し、社長・役員で全ての「気づき」に返信している。世の中には社員満足(ES)ではなく社長満足(PS)を求める経営者が多い。これは大きな間違い。経営者が社員満足(ES)を第一とすることで、社員は顧客満足(CS)を第一にすることができる。  

6.若いビジネスマンへ

 社会からニーズのあるところに仕事は発生する。それに対して労働で貢献し感謝の気持ちをお金でいただくことが仕事の本質である。「好きな仕事ができない、一流大学を出たエリートなのに出世が遅い、左遷させられた」などと不満を持つ人がいる。しかし、上記のような価値観を持てば、それは思い上がりと言える。異動などのトラブルは自分を磨く砥石である。「自分は運がいい、違う仕事ができるチャンスだ」と考えれば大きく成長できる。「何の仕事をするか」よりも「どう働くか」の方が大事である。

株式会社日本レーザー
◇ 住所 〒169-0051 東京都新宿区西早稲田2-14-1   
◇代表者名 代表取締役 近藤 宣之
◇設立 1968年
◇資本金 30百万円
◇従業者数 57名
◇ URL http://www.japanlaser.co.jp/    
 

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