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がんで苦しんでいる世界中のひとを助けたい!
〜創薬バイオベンチャーの挑戦〜            ジェイファーマ株式会社

地域経済部 次世代産業課

 ヒトゲノムの解読から10年以上が経過し、この間多くのバイオベンチャーが誕生しています。
 今回はその中から、創薬バイオベンチャーであるジェイファーマ株式会社(神奈川県横浜市)の遠藤仁社長にお話を伺いました。

■創業のきっかけを教えてください。

愛知淑徳大学・真田 氏
遠藤仁社長

 大学の医学部を卒業して内科医として勤務しましたが、その後大学に戻り、薬理の基礎研究を行っていました。その頃に、大学の研究成果が薬として実を結んで世の中に出ていることに触れて感激したことを覚えています。そして、「薬のメカニズムが分からなくても患者は新薬を待っている。それなりにその時々のベストを尽くす必要がある」という恩師の言葉を自問自答していました。
 そのうち、大学での研究ばかりでなく、当時の厚生省の政策懇談会や審議会の仕事をするようになり、世界の創薬の事情、日本の現状と問題点、薬事政策、知財戦略などに触れ、現在の創業につながる貴重な経験をすることができました。
 大学ではトランスポーターに関する基礎研究を行い、応用法を確立しました。これらの研究成果、経験を創薬に結びつけるため、定年退職を機にジェイファーマ株式会社を設立しました。

コンテスト会場
ジェイファーマ鰍ェ入居する横浜新技術創造館 

■御社の基盤技術である「トランスポーター」による創薬とはどのようなものでしょうか?

 細胞の内外を仕切る細胞膜には、受容体、チャネル、トランスポーターの主要な3種類の膜タンパク質が存在し、細胞の機能を維持しています(図1)。トランスポーターは、細胞内外の物質の輸送に関与するもので、「物質の結合→膜内移動→他側への放出」を繰り返す興味深い機能を有しています(図2)。トランスポーターを用いて糖やアミノ酸やビタミン類などが細胞の外から細胞内に輸送され、逆に細胞内から細胞外へ老廃物が排出されます。

 ヒトゲノム解読の成果を受け、トランスポーターはおよそ500分子種があることが分かっています。我々は、細胞ががん化すると、必須アミノ酸の細胞膜を通した取り込みが正常細胞と異なることを発見しました。すなわち、正常細胞のトランスポーター(LAT2)とは異なる、がん細胞特有のトランスポーター(LAT1)が著しく発現上昇することを世界に先駆けて見出したのです。さらに、LAT1の発現強度は、がんの悪性度(致死率)に相関することも明らかにしました。
 この発見をもとに、LAT1を標的とした抗がん剤(JPH203)と診断薬(JPH211)を一体的に開発しています。
 開発している抗がん剤(JPH203)はがん細胞に特異的に発現するトランスポーターに作用する低分子化合物であり、正常細胞のトランスポーターには作用しません。LAT1だけに作用することにより、がん細胞の栄養補給を絶ち、細胞増殖停止を図ることができます。さらには、細胞内情報伝達に影響を与えて、細胞の餓死を待たずにアポトーシス(細胞死)を誘導することができます(図3)
 また、開発している診断薬(JPH211)は採取した検体に対し、免疫組織化学染色を施すことによりLAT1の発現強度と広がりを明らかにするものです。これにより、がんの悪性度を判定し、治療法選択に資することが期待されます。
 このように、治療薬と診断薬の両方を開発しているのは、両者をセットで活用することにより当該治療薬の有効な患者を明らかにすることができ(コンパニオン診断)、より付加価値を高めることができるためです。


■創薬バイオベンチャーを立ち上げ、事業運営するなかで苦労された点などはありますか

 大学時代は潤沢な研究費があり、研究に打ち込むことができましたが、退職して創業当時は売上がほとんど無く、会社を維持するだけでも大変でした。創業資金は、個人保証による金融機関からの融資もありましたので、返済が滞ると大変です。大学時代に取得した特許のライセンシングにより、一時金やロイヤリティ収入がありましたが、微々たるもので、研究費を賄うことができません。こうした中で、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)や地方自治体の補助金を獲得して研究を続けることができたのは幸いでした。
 国内のほとんどのベンチャーキャピタルの方々とはお話をしました。最近は、ベンチャーキャピタルのバイオベンチャーに対する投資意欲は前向きに感じられます。昨年は1社から出資を得ることができ、今年は更にもう1社から出資を得ました。
 これまでは都内にオフィスを構えていましたが、昨年からは横浜市の横浜新技術創造館(リーディングベンチャープラザ)に移りました。その後、横浜市特区リーディング事業助成金に採択されまして、乳がんの体外診断薬キットの開発事業を実施しています。  

■最後に、今後の御社の展望についてお聞かせください。

 現在、NEDOのイノベーション実用化ベンチャー支援事業(平成25年度補正予算)に採択され、先ほどの抗がん剤(JPH203)の開発を行っているところです。この事業では、JPH203の第T相臨床試験を行うことにより、POC(Proof of Concept:開発コンセプトの妥当性を傍証すること)の確保を目指しています。
 新薬を上市するには、この後も第U相、第V相臨床試験、承認申請、承認とまだまだ遠い道のりです。また、今後の臨床試験は多額の費用が必要でベンチャー単独では実施することが困難で、大手製薬企業とのアライアンスも視野に入れています。大手製薬企業では、ヒトでの実証データが無いとなかなか話に乗ってくれないので、今年度実施している事業でしっかりと成果を出すことが必要です。
 一刻も早く新薬を上市し、がんで苦しんでいる世界中のひとを助けることが当社の使命です。

■ありがとうございました。

ジェイファーマ株式会社
◇住所 神奈川県横浜市鶴見区小野町75番地1
横浜新技術創造館1号館513号室  
◇代表者名 代表取締役 遠藤 仁
◇設立 2005年12月
◇従業員 6人
◇事業内容 創薬
◇連絡先 TEL 045-506-1155   FAX 045-506-1156  
◇URL http://www.j-pharma.com/    

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