シリーズ

  世界の医療現場を支える日本のモノづくり
   〜ミクロの縫合を可能にする世界最小の手術用縫合針〜  

地域経済部 地域振興課

 千葉県市川市にある株式会社河野製作所は創業60年以上の歴史を持つ医療用針糸を製造販売する医療機器の老舗メーカーです。同社が得意とするのは、通常の手術用針糸だけではなく、特にマイクロサージャリーと呼ばれる顕微鏡を使った微細手術に使われる超極小針糸も作っています。同社が持つ高度な技術力は数々の表彰を受けており、2010年には天皇陛下も同社の製造現場を視察されています。  

 

熟練したマイスターによる顕微鏡を使用した緻密な作業
熟練したマイスターによる顕微鏡を使用した緻密な作業




【患者にやさしい手術針】

  株式会社河野製作所が製造するのはマイクロサージャリー(微細手術)に使う神経、血管縫合用の針。なんとその大きさは、最小のもので直径30ミクロン(1ミクロンは0.001ミリメートル※人間の髪の毛の太さは約50〜100ミクロン)、長さ0.8ミリのステンレス製。針と糸の一体型で0.1ミリメートルの血管縫合が可能で、肉眼でかすかに確認ができるぎりぎりのサイズです。
 同社はこの微細外科手術用縫合針で国内シェアの60%を占めており、特に直径70ミクロン以下の超微細領域ではほぼ全量を供給しています。
 縫合針の直径は、手術を受ける患者の体への負担に直接影響を与えるため、特に血管の細い赤ちゃんや子供に対する手術の際は同社の技術が大きく貢献しています。

 

微細手術用縫合針(黒ゴマとの比較)
微細手術用縫合針(黒ゴマとの比較)


【開発のきっかけは現場の声から】

 株式会社河野製作所は4代目の現社長河野淳一氏の祖父で時計メーカーの技術者でもあった河野水之介氏が独立し創業しました。当時は時計や温度計など計器用の針を製造しており、本格的に医療分野に参入したのは1964年のことです。現社長の代より今回ご紹介している超微細針糸はじめとする高付加価値型商品の開発、製品化を開始し、日々進化させています。開発のきっかけはある医療関係者からの「現在、手術ができない領域である50ミクロン〜500ミクロンの世界に対応できる手術器具をつくってほしい」という要望からでした。
 同社の商品開発のモットーは敢えて困難な技術に挑戦するということです。困難に立ち向かう原動力となるのが、長年の信頼から生まれる医療現場との密接なコミュニケーションです。現場の声や熱意から生まれたニーズに真摯に応えていくことで、現場で日夜奮闘する医師と志を同じにし、自分たちの技術を通じて、医療技術の発展ばかりでなく、患者の1日も早い回復につなげることが社長以下従業員のやる気と責任感を引きだしています。


【モノづくりを支えるマイスター、自作の機械装置】

 微細手術用の医療機器は手術の内容や患者の特性により微調整が必要となります。必然的に、少量多品種生産となり同社の販売品目は一万点を超えます。さらに医療機器の特性から安全面、衛生面への対応が不可欠で、製造工程の約50%は検査に費やされます。その生産部門や検査部分を支えるのが同社で働くマイスター(職人)です。
  社員の平均年齢が30代以下ということからもわかる通り、同社のマイスターには女性や若者が多いのが特徴です。女性や若者が得意とする丁寧かつ繊細でスピーディーな作業こそが同社の持つ技術力の根幹となっています。
 同社の製品は全て社内一貫生産であり、製造に使う装置や工具類も全て自作しているのも特徴です。そもそも世界最小の手術針を生み出すには、それを製造するための装置や工具から自作する必要があり、工場内には世界でここしかないノウハウの詰まった器具類が所狭しと並んでいます。以前は、職人の技と勘に頼っての製造でしたが、技術の承継が課題でもありました。個々の職人が長い年月をかけて培ったマイスター技術を装置化することにより、他では真似のできない独自の技術力が継承できる体制が生まれたと言えます。

 
微細手術用縫合針(黒ゴマとの比較)
クリーンルームでの作業(本社工場:市川市)


【これからの河野製作所】

 既にマイクロサージャリー分野の医療機器に関しては、世界的にも認知度が高い同社ですが、更なる高付加価値製品の開発に対しては努力を惜しみません。
 河野社長は「米国・欧州で開発された製品は、日本人を含むアジア系の体型にあっていないという現状などを踏まえ、今後のターゲットとしてアジアへの進出に取り組みます。中国を皮切りに、東南アジア等への進出を計画しており、販売以外にも商品開発のための情報収集も目的としています。現地販売代理店の情報を生で得ることで、世の中のニーズやスピードに対して後れをとらないようにし、微細手術用縫合針の分野から、さらに周辺器具にまで生産品目を拡げ、手術室内で使用される器具をパッケージ化して提供します」と語ります。実際に2012年の4月から現地での販売を開始。中国国内では製造できない高付加価値製品に特化して販売しています。背景には、中国、東南アジアの医療技術が急速に向上しており、高性能な医療機器が求められているという理由があります。
 河野製作所が目指すのは、モノづくりの根幹部分は国内に維持したまま、情報収集や臨床の面で海外のドクターと連携し、新たな価値を生み出すことです。自社の持つ技術を使い、どの分野でGNT(グローバルニッチトップ=隠れた世界チャンピオン)がとれるかを追求し、将来的には、新製品の売上を全体の50%まで高めたいと考えています。






河野淳一社長 結城紬のコート
河野淳一社長 つくば工場外観
株式会社河野製作所
◇ 住所 千葉県市川市曽谷2−11−10   
◇代表者名 代表取締役社長 河野 淳一
◇設立 1949年(昭和24年)
◇資本金 1,000万円
◇従業員 140人
◇ URL http://www.konoseisakusho.jp/    

 

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