シリーズ

  微細射出成形技術を活かして、医療分野への参入
      〜世界初「樹脂製注射針」の製品化を目指して〜
                                                             “株式会社一倉製作所”                                           

地域経済部 地域振興課

 榛名山の麓、高台から群馬県の平野部を一望できるロケーションの群馬県榛東村に、24時間・フル稼動を続ける元気な中小企業がある。株式会社一倉製作所は、昭和39年にこの地で創業し、以来、金型製作から射出成形部品の生産を一貫して手掛け、成長を続けてきた。計20台の射出成形機が並ぶ工場内では、化粧品部品・自動車部品・電子部品と様々な製品が製造されている。
 
 現在の主力製品は化粧品関連の樹脂成形品。事務所内のサンプル品ショーケースには大手化粧品メーカーの基幹ブランドがずらりと並ぶ。
  化粧品の中身と同等か、あるいはそれ以上にブランドイメージを左右するパッケージには、高い外観品質と安定した生産が要求される。常に新しいものを求める化粧品メーカーやパッケージデザイナーの厳しい要求に応え続け、微細成形のノウハウを蓄積してきた。
 特にマスカラ用のブラシを樹脂で成形する技術は一倉製作所が世界で初めて成功したもの。平成13年に製品化に成功してから現在まで約400万個を生産し、これまで不良によるトラブルは1件もなく、精密な金型技術と成形・量産技術への取引先企業からの信頼も厚い。

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【繊細な加工技術は医療分野へ進展】

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 一倉製作所の微細成形技術に着目したのは、化粧品業界だけではなかった。同社の技術力の高さをよく知る機械メーカーを通じて、大手医療機器メーカーから、高機能(小径)で低コストの樹脂製注射針ができないかというニーズが寄せられた。医療現場では注射器の開封から使用後の廃棄に至るプロセスで医療従事者に誤って刺さってしまう針刺し事故が多く発生している。最悪の場合、医療従事者が感染症(肝炎、HIV等)にかかってしまうため、各医療機関は様々な防止策を講じているが、決定的な解決には至っていない。そこで、開封から廃棄までのプロセスを単純化できる樹脂製の注射針が求められており、一倉製作所では、樹脂製注射針の開発という新たなチャレンジを開始した。研究においては、開発のステージや新たな課題に応じて経済産業省の「平成21年度ものづくり中小企業製品開発等支援補助金」、22年度、24年度と「戦略的基盤技術高度化支援事業(通称:サポイン)」の採択(※プロジェクトリーダー:一倉製作所、サブリーダー:群馬産業技術センター、事業管理機関:群馬県産業支援機構)を受け、「世界初の」樹脂製注射針の製品化に向けた取組を続けている。

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お話を伺った一倉専務取締役(左)と吉岡部長(右)

 開発当初は周囲から「樹脂で注射針ができるはずがない」という声もあり、開発を進める一倉史人専務取締役にも不安があったという。金型や材料の研究をはじめ、様々な試行錯誤の末、内径0.2mm〜外径0.4mmの、樹脂製注射針(中空構造)の試作に成功した。当面の目標は予防接種等に使用される注射針である。新型インフルエンザの流行等でワクチン接種の需要は今後も高まることが予想され、大手医療機器メーカーを通じて全世界に展開する計画である。
 この樹脂製注射針のサンプルを「メディカルクリエーションふくしま2012」に出展した際には来場者から非常に多くの反響があった。またサポインプロジェクトを進める中で、大学医学部や医療機器メーカーといったアドバイザーから、様々な現場のニーズも聞けるようになった。これらの経験を通じ、本格的な医療分野参入への土台も整いつつある。一倉専務は「注射針は製品化まであと一歩のところまできている。サポインの事業化成功例として、少しでも早く市場に出したい。」と意気込む。



 【若手の人材育成と地域ネットワークの構築】

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 プラスチック業界は省力化・無人化が進み、中国を中心に生産の海外移転が進んでいる。景気の影響を受けにくいとされる化粧品業界にあっても、プラスチック成形品の受注は減少傾向にある。そんな中、一倉製作所では、新卒者の採用を積極的に進め、従業員の若返りと人材育成に力を入れている。今後は、高い成長性が見込まれる医療分野を中心に据えながら、既存取引先からの「多品種少量化」に対応するために、「中国や他社ではできないレベルの高いものに取り組んでいきたい」と一倉専務は話し、若手従業員の教育にも余念がない。
 
 一倉専務は、群馬県プラスチックス工業振興協会の副会長も務めており、地域の同業者との交流にも熱心に取り組んでいる。特に、同協会の若手経営者は定期的に勉強会を開催し、群馬産業技術センターも交えて各社の課題を共有する等、地域全体での技術力のアップに力を入れている。   「群馬県プラスチックス工業振興協会では、定期的な勉強会を通じて、ライバル関係ではなく仲間意識が強固になってきた。樹脂成形には、ガス焼け・充填不良等の各社共通の課題があり、これらをチーム群馬で解決して、群馬県のプラスチック産業を盛り上げていきたい」と力強く語った。地域のリーディング企業として、今後も成長が期待される企業である。


株式会社一倉製作所
◇ 住所 群馬県北群馬郡榛東村広馬場1527番地   
◇代表者 代表取締役 一倉 良仲
◇設立 昭和42年11月8日
◇資本金 2,000万円
◇従業員 58名
◇業務内容 プラスチック製品全般の成型加工 試作品および量産品の加工 精密機械部品加工
◇ URL http://www.e-196.jp/index.htm    

 

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