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中小企業の経営課題に応える知的財産活動のポイントと支援のあり方

 多くの中小企業では、優れた技術を有していてもそれが競争力強化につながりにくいのが現状です。グローバル化や国内需要の減少の中で、リスクを減らして事業を優位に進めて行くうえでは、ノウハウを含む知的財産を経営戦略に活かす知財経営が重要課題の一つになっていますが、経営資源に限りがある中小企業が独自にそれを実行するのは容易ではありません。  
 関東経済産業局では、中小企業が知財経営を実現させるには専門人材によるコンサルティング支援が不可欠との認識のもと、平成20~22年度に「地域中小企業知財経営基盤定着支援モデル事業」(以下、「知財コンサルティング事業」という。)を実施し、その結果を「知財戦略コンサルティング活用事例集2009~2011」としてとりまとめ、知財経営の必要性とその手法について周知してきました。  
 さらに、平成25年度においては当該事例集に掲載された企業のうち13社への事後調査を行い、過年度事業(=コンサルティング支援による知財経営の導入・推進)の効果等を確認するとともに、中小企業が円滑に知財経営戦略を構築・活用するための一助とする「中小企業の経営課題に応える知的財産活動のポイントと支援のあり方」を取りまとめました。  

 以下にその概要を記しましたので、ご一読ください。

「中小企業の経営課題に応える知的財産活動のポイントと支援のあり方」の概要

1.知的財産経営(知財経営)について

 知財経営とは、企業の経営戦略(販路開拓、新事業進出、新製品開発など)のなかで特許・商標をはじめとする産業財産権や秘伝のタレのように長年積み上げてきたノウハウを積極的に活かして、事業展開を円滑化する手法です。
 中小企業が知財経営を実践し効果的に定着していくうえでは、例えば、知的財産担当者が配置されている、特許出願費用を予算化している、という形式的な仕組みがあればよいのではなく、中小企業の経営において知的財産活動の必要性を明確にするところから開始することが重要です。

2.知財コンサルティングに求められること

 知財コンサルティングによって経営支援を行う専門人材に求められるのは「知的財産制度や実務」に関する知識だけではなく、「経営課題を明確化すること」、「知的財産活動の経営上の効果を理解すること」、「経営課題に効果的な知的財産活動を提案、実行できること」といったノウハウです。
 従って、弁理士による「発明発掘支援」など企業内における発明奨励活動の促進や「汎用的な知識」を提供することは間違いではないものの、それだけでは「知財コンサルティング」として十分とは言えません。個別企業ごとに、経営戦略上必要な知的財産活動を特定し、当該知的財産活動の目的、具体的成果目標を専門家自らが検討し、中小企業経営層への提案を通じて、認識を共有することが極めて重要です。

3.知的財産経営の成功のポイント

(1)コーディネート機能の重要性

 それぞれの中小企業が抱える経営課題に対して、必要十分なノウハウを有する適切なコンサルティング専門人材を中小企業自らが見つけ出すのは容易ではありません。
 このため、中小企業の現状や課題を把握・分析する能力と専門人材との豊富なネットワークを有し、最適な組み合わせで両者を繋ぐコーディネート機能が極めて重要になります。ノウハウに関しても、知的財産の取得・活用等の制度や実務的な知識だけでなく、知的財産活動が経営に及ぼす効果など知的財産経営に関する知識が求められます。
 このような観点から、当局が管内各都県に設置している「知財総合支援窓口」がこの機能を担うことも想定しています。

知財コンサルティングのコーディネートを行う者に求められる事項

1)真に「知財戦略コンサルティング」を実施できるノウハウを有する専門人材もしく
  は専門人材のチームを確保する
2)支援先企業の業種・業態・経営課題に知見のある支援者をマッチングする
3)支援先企業の知識水準やニーズに関して事前把握を行う

(2)知財コンサルティングを受ける中小企業が注意するポイント

 中小企業は、「知的財産経営」の導入・定着に取り組み始める際には、知的財産活動に関する経験や知識が不足していることを前提として、知的財産活動に過剰な期待を抱くのではなく、自ら事業目標など基本に立ち返り「知的財産経営」に関心を持った経緯・動機などを整理することが重要です。

知財コンサルティングを受ける中小企業が注意すべき事項

1)知財活動を検討する前に経営戦略や事業計画を再度見直す(知財活動の必要性を十
  分に見極める)
2)知的財産活動を進める上で「特許権」だけに捉われない
3)支援専門人材に依存せずに主体的に意思決定を行う
4)知的財産活動を実践するための社内リソース(人員、知識水準、予算など)を明確
  にしておく
5)専門人材のコンサルティングを通じて経営課題が解決できない場合、知的財産活動
  等を大胆に変化させる

(3)知財コンサルティングを行う専門人材に求められる事項

 コンサルティングの専門人材は、特定の領域の専門家であることが多いですが、知財戦略の支援を行う場合には、企業経営や法律、販路、技術などに対する総合的な分析能力が問われることから、過去の専門領域の支援方法にこだわりすぎてはいけません。
 支援先企業の業界動向、経営課題、知的財産活動に関する知識水準、経営者の性格、技術の特徴、相手の要望などを多角的に踏まえた上で、相手に合わせた個別具体的な知財支援が行うことがポイントです。

知財コンサルティングを実際に担当する者に求められる事項

1)経営課題や事業計画の妥当性まで遡った精査・検討を行う
2)一般論ではなく、支援先企業の個別具体論に応用した知的財産戦略・仕組みの提
  案を行う
3)自らが得意な支援テーマであっても、経営課題の達成のために必要なければ実施し
  ない
4)支援先企業の知的財産の知識水準をきめ細かく把握し、相手の水準に即してコミュ
  ニケーションを図る
5)特許権の活用だけでなくノウハウの管理・活用を視野に入れる
6)中長期的な経営課題の変化を見据えた知的財産活動のロードマップを描く

4.知財コンサルティングによる成果の事例

 本事業では、4つの経営課題(新市場開拓、新規事業の立ち上げ、既存事業の保護、社内活性化・事業承継)に対する知財コンサルティングを受けた13企業のその後の経営状況、知財活動の成果状況等を調査しています。そのうち、3つの事例について紹介します。

(1) 新市場開拓

 新市場開拓は、既存の製品で、新しい市場を開拓しようとする経営課題です。
 A社では、知財コンサル事業で「ライセンスアウト」というビジネスモデルを提案、知財ありきでなく、あくまでビジネスの上流から再検討を行った事が重要と考えられます。ライセンスアウトを行わなければならないベンチャー企業などは、ノウハウをパートナーに評価してもらい、ライセンスに繋げることも有効です。そのためにも日頃からノウハウを属人化せず蓄積していくことを提案、このことが成功要因になっています。結果、大手製薬メーカーへのライセンスアウトが成功し、このライセンスアウト契約により一定の収益を上げることができています。
 新市場開拓は、既存の製品やサービスを新市場への展開に活用することから、必要になる知的財産活動が明確な場合が多く、比較的成果が出やすい課題であるといえます。

(2) 新規事業の立ち上げ

 新規事業の立ち上げという経営課題については、知的財産活動の効果はあまりなかった企業が多くありました。
 たとえば、新規事業の事業化以前に事業計画そのものに課題があったため、知財コンサル事業による効果の導出が難しかった事例もありました。新規事業の立ち上げへの支援はマーケティングと新しい製品の開発とを両立させる必要があり、知財以外の要素が大きい傾向があります。専門人材が事業計画の見直しを提案したとしても、すでに計画の大きな修正が難しい側面もありました。
 支援を行った新規事業自体には大きな進展がみられず、「経営課題」の特定をもう少し具体的に絞り込む必要がありました。

(3) 既存事業の保護

 既存事業の保護では、既存の事業を続ける中で支援先企業が何らかの知財に起因した経営上の特定の問題を認識した結果、支援を活用したケースです。
 B社は課題としていた図面の流出の心配がなくなるだけでなく、同社の管理体制に対する顧客からの信頼が高まるなど、既存事業の保護を確実に実現しています。特許とノウハウで保護した製品はすでに一定規模の売り上げが上がっており、当初目的とした下請けからの脱却という課題も克服しつつあります。
 既存事業の保護では、すでに起こっている問題の原因やそれを解決する知財活動が比較的明確なため、成果が上がるケースが多数ありました。

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